単語の選択
篠田 義明 『コミュニケーション技術』より

Reading Journal 2nd

『コミュニケーション技術』 篠田 義明 著
 [Reading Journal 2nd:読書日誌]

第二章 単語の選択

第一章において本書のテーマである「実用文」について、その重要性が説明された。ここより、実用文の要素である「単語」(第二章)「文」(第三章)「パラグラフ」(第四章、五章、六章)と各論となる。今日のところは、実用文として「単語」を選ぶ時の指針、注意点である。それでは読み始めよう。

実用文における単語の選択

文は、一つかそれ以上の単語が集まった構成要素なので、適切な単語を選ぶ必要がある。実用文の単語は相手を見て選ぶ必要がある。

実用文では、

ワンワード / ワンミーニング (one word / one meaning)

が基本となる。芸術文では、表現力に富んだ言葉を使う必要があるが、そのような言葉は意味を曖昧にし読んでいる人を惑わしてしまう。事実を正確に伝えることが目的の実用文では、どのようにでも解釈できる用語の使用は避けなければならない

曖昧な名詞に注意

名詞では、例えば「雨」と書いたのでは、読む人にその程度が分からず書き手との間にギャップが生じる。「暴雨」「大雨」「豪雨」などと書けばその程度が伝わる。その他「子供」や「学校」などもあいまいで、「長男」「次男」「大学」「高校」などの「核になる語」を使うと、読み手は、単語の真の意味を推測しなくてもよくなる。これを「ワンワード/ワンミーニング」の原則という。

曖昧な動詞に注意

同様に動詞についても、「見る」という語では、「眺める」のか「点検する」のか曖昧である。同様に「読む」「動かす」「使う」なども曖昧であるので注意が必要である。

曖昧な形容詞や副詞に注意

形容詞や副詞はいたずらに使用しないように気を付ける必要がある。

たとえば「良く一致した」などは曖昧であるため、「完全に一致した」とした方が良く、「十分に速い」などは、程度が分からない。程度が違う単語をどうしても使う場合は、「合理的な割合、つまり51対49でわける」のように、程度を具体的に説明するのがよい。

また、「・・・的」「・・・性」というような接尾語は、意味があいまいになるので使わない方が良い

別の言葉で説明しない

単語の中でも用語は、決まった意味を持つので、別の言葉で言い換えてはいけない。専門用語を別の言葉で説明すると、文が長くなるだけでなく理解ができないこともある。専門家を対象にした文では、専門用語を使う方がよい。

含蓄のある言葉はできるだけ避け、造語しようとしないで、それぞれの分野で決まっている専門用語があればそれを使う。

動詞との相性

「ワンワード/ワンミーニング」の用語を選択したら、次に動詞を選ぶ作業となるが、実用文では、動詞はほとんどの場合、名詞と対応した決まった語となる。「将棋は指す」「碁は打つ」、「潮煙が立つ」「樹氷が咲く」「水垢がたまる」「水質は汚濁する」などと相性が決まっている。これを他の動詞に置き換えるようなことはしない方が良い。

形容詞との相性

形容詞は必要以上に使うと、文章が主観的になり、曖昧になり、書き手のイメージが伝わらない。たとえば「彼女は美しい」は、「美しい」の程度が読み手に伝わらない。顔の様子、目の大きさ、のような具体的な描写を心掛けたい。また、動詞と同様に名詞につく形容詞も決まっているので、相性の良い形容詞を選ぶべきである。

「行う」は極力使わない

動詞形がある名詞に「行う」という余計語をつけている文が多いが、この「行う」は省くのがよい。たとえば「分析を行った」⇒「分析した」、「実験が行われていなかった」⇒「全く実験されていなかった」、「テストを行った」⇒「テストした」など言いかえた方が良い。

用語をみだりに変えない

単語の重複を避けるために機械的に用語を変える人がいるが、同じ事柄を表す専門用語は変えない方が良い。別の単語を使う場合は、前に使った用語の同義語や代用語(代示)を使うのが良い。特に学術用語は、途中から別の用語にすり替えないほうがよい。

いきなり未知の用語を使わない

読み手が辞書で調べなければならないような語の使用は慎むべきである。実用文は読み手が限定されているので、読み手に合わせた語を選ぶことを忘れてはならない。

略語を使う場合は、まずそれを紹介してから使うべきである。さらに、日本文の中に英語を交えると、読みにくくなるので、英語を使わなければ文意が曖昧になる時だけ使用するようにする。

代示を使う

「乗り物」や「あそこ」などの曖昧な用語を使用すると、聞いた方は理解できないことがある。その場合は「乗り物」⇒「自動車」⇒「乗用車」⇒「フォード」のようにしていくと明確に、具体的になる。また「あそこ」といってもわからないので具体的な場所を示す語良い。

名詞の反復を避けるために使う「それ」「これ」「彼」「彼女」「あなた」「かれら」「われわれ」「当社」といった指示代名詞は、読み手が指しているものが分からないとことも多いので慎重に使いたい。文中に代名詞を具体的に示すことにより内容が一層明快になることが多い。

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