『アメリカ革命』 上村 剛 著
[Reading Journal 2nd:読書日誌]
終章 南北戦争へ
今日のところは「終章 南北戦争へ」である。ここでは、アメリカ革命が終わった後に起こった南北戦争の要因や日本への影響が語られた後、本書のまとめが書かれている。そして巻末に簡単な「あとがき」がある。それでは、ラストスパート。
始まりの終わり
革命とは始まりだと言ってこの本を始めた。だから、始まりの終わりが、この本の終わりになる。(抜粋)
アメリカ革命の終わりは憲法体制の確立である。それには、先住民の強制移住という裏面史もある。
アメリカ革命の終了後に、アメリカはまた再び内部分裂の危機を迎える。奴隷制が原因となった南北戦争である。
一八五〇年代に入ると、二つの事件が南北の対立を加速させる。
- カンザス・ネプラスカ法:「ミズーリの妥協」によって、ミズーリ以南でなければ新たな州は奴隷制を導入できないことになっているが、カンザス・ネプラスカは、ミズーリより南でないのに、人民主権に基づいて奴隷制を導入できるように提案された。これにより南北の均衡が崩れた。
- 共和党の結成:「カンザス・ネプラスカ法」に反対する北部の政治家が南部の民主党に対抗して共和党を結成した。
そして、一八六〇年に共和党のリンカーンが大統領になると、南部が反発し離脱を表明した。これにより四年間に及ぶ内戦となった。
そしてこの南北戦争の終結から六年後に日本から岩倉使節団がやってくる。彼らはアメリカの政治体制、連邦憲法を見分し、帰国後、木戸孝允は憲法の重要性を新聞紙上で訴えている。そしてそれから一六年後に『フェデラリスト』を座右に置いた伊藤博文らによって明治憲法が制定、発布された。
本書のまとめ
最後に本書全体のストーリーをまとめている。
独立にあたっては、イギリスが圧政に対してアメリカが自由を訴えたという、従来の解釈だけでは、不十分であり、一つの帝国の内乱として両者をとらえる必要がある。
独立後、立法者が連邦憲法を作り、アメリカは連邦国家となった。しかし、それはすぐには機能せず、様々な人たちの抵抗、外国からの介入、とめられない奴隷制、むき出しの暴力の発現、などが次から次へと登場した。しかし連邦政府の政治家たちはそれに粘り強く対処し、権利章典の作成や「内閣」の形成、憲法解釈をめぐる論争や連邦最高裁判所の判決などを通して動態的に運用した。そして連邦憲法は、現実政治にもまれる中で聖典化した。
一八一〇年代以降に、ようやくある程度国家として独立を保つことに成功する。しかし、強い連邦を背景にし黒人奴隷と先住民の抑圧、迫害、虐殺の実行が可能となる。アメリカの帝国化である。さらに西部へ領土を広げ続け、戦争とともに多くの市民が政治的な権利を得て、民主政も拡大した。その軸にあったのが連邦憲法であった。
それは、その後も続く国家の支柱となる。アメリカ合衆国の連邦憲法は、修正条項を付け加えるというかたちで柔軟に運用され、今日なお存続しているのである。憲法という始まりこそが決定的な土台として、超大国の発展を支えてきたと言えよう。(抜粋)
あとがき
最後にあとがきとして、著者が本書を書く際に注意した点と本書ができる過程について書かれている。
アメリカ革命をどのように描くかについて、著者は、まず何が起こったかについて虚心坦懐に努めたとしている。アメリカ革命で何が起きたか、何が失われたか、誰が利益を得て、誰が命を落としたのか、などを描き出し、「自由を求めて戦った英雄の物語」という通常のイメージを相対化しようとした。
本書は、著者の博士論文をもとにした『権力分立論の誕生』を読んだ胡逸高さんから連絡を受け、企画が始まった。また、本書の第3章と第4章の前半は、岡山大学での集中講義がもとになっている。
関連図書:上村 剛(著)『権力分立論の誕生』、岩波書店、2021年
[完了] 全22回
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