SNSによってかわる美術館の常識 — 美術館の新たな取り組み(その1)
ちいさな美術館の学芸員 『忙しい人のための美術館の歩き方』より

Reading Journal 2nd

『忙しい人のための美術館の歩き方』 ちいさな美術館の学芸員 著
 [Reading Journal 2nd:読書日誌]

第3章 美術館の新たな取り組み 1 SNSによって変わる美術館の常識

今日から「第3章 美術館の新たな取り組み」に入る。第3章では、近年美術館が行っている新たな取り組みが紹介される。まず今日のところは、SNSを通した美術館の取り組みである。それでは読み始めよう。

SNSを通した展覧会の広報

美術館の新たな取り組みとしてまず挙げたいのがSNSの活用です。美術館や博物館が、X(旧Twitter)、Instagram、FacebookなどのSNSアカウントを持っているのは珍しくない、むしろ当たり前の時代です。(抜粋)

このようなSNSを美術館では主に広報活動に活用している。ここで著者は、なかなか集客が見込めなかった現代アート系の展覧会でSNSの活用により、ヒットした例を二つ上げている。

  • 「レアンドロ・エルリッヒ展」(森美術館)
  • 「塩田千春展」(森美術館)

である。これらの展覧会を行った森美術館はSNSを広報に使った美術館の先駆けであり、そのSNSマーケティングは、『シェアする美術 森美術館のSNSマーケティング戦略』(洞田貫晋一朗、翔泳社、2019年)にまとめられている。

マスメディアが主導する大規模展覧会では、多額の予算を投じて広報を行うことが出来るが、そのような美術館は一握りでしかない。そのため費用がほとんどかからないSNSによる広報は、小さな美術館にとっての広告ツールとなりえる。しかしこのようなSNSアカウントであるが、実際には運用担当者の力量が問われ、無料なので一応やっておこう、という運用では効果を上げるのは難しい。

また著者は、大きな美術館ともかく、地域に根差した小規模美術館の宣伝にSNSの拡散を利用しても、わざわざ足を運ぶ人が少なく、集客数が稼げないのではないかと疑問を呈している。小さな美術館では実際に来てくれた人に対しリピーターになってもらうような工夫の方が効果が出るはずである。

「フォロワーが増えれば何とかなる」という発想で、SNSを一発逆転の魔法のツールとして特別視しすぎると徒労に終わる危険があるのです。(抜粋)

シェアを前提とした写真撮影の普及とその問題点

SNSの活用は、公式アカウントによる広報のほかに、来館者に情報を発信してもらい拡散してもらうという方法がある。現代では、このSNSで発信された情報を見た人が来館する流れがあり美術館としても無視できない。

そこで比較的簡単にできる企画としては「フォトスポット」の用意と「ハッシュタグ企画」である。ハッシュタグ企画は、美術館が指定したハッシュタグをつけて発信するとちょっと特典をつけるというものである。

しかし何よりも効果が高いのが、展示室内の写真撮影とその使用を許可することです。(抜粋)

美術館は、基本的に写真撮影禁止であるが、最近はだいぶ様相が変わってきて、展示室内の一部、またな全作品の撮影が許可する美術館が増えてきている。前述の森美術館の「レアンドロ・エルリッヒ展」も「塩田千春展」も、会場内で撮影、SNSでの公開が許可されていて、来場者の写真の発信がヒットのきっかけとなっている。

しかし、ここで問題なのは著作権を守ることが必要不可欠であるということである。日本では著作者が没後70年間は著作権が有効である。そのため、撮影を許すためには一点ずつ著作者の許可が必要となる。これは、美術館にとって一筋縄ではいかない作業となる。

さらに、展示室での撮影を許可することにより、他の人の鑑賞を妨げるという弊害もある。展示室で始終カシャカシャと撮影音が響き、中には話題の作品と自撮りすることが目的になっている人もいるのも事実である。

それでもまだ現時点では、美術館で撮影できることは当たり前でない。できない美術館の方が多数派だからこの程度のトラブルで済んでいると私は考えています。(抜粋)

そして著者は、撮影できることが当たり前になると、現在の「撮り鉄」問題のようなことが起こらないかと心配している。


関連図書:洞田貫晋一朗(著)『シェアする美術 森美術館のSNSマーケティング戦略』、翔泳社、2019年)

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