[読書日誌]『憲法とは何か』
長谷部 恭男 著

Reading Journal 2nd

『憲法とは何か』長谷部 恭男 著、岩波書店(岩波新書)、2006年
[Reading Journal 2nd:読書日誌]

はしがき

『アメリカ革命』を読み終わった。アメリカ革命は、『ポピュリズムとは何か』という本を読んで、そういう意味での問題意識から読んだのだが、アメリカ革命は、独立だけではなく、独立に始まり、連邦憲法を制定し、そして様々な困難を乗り越え連邦制が確立するまでをいうことが分かった。そして、大切なことは、その世界で初めての成文憲法である合衆国憲法が、現在の超大国アメリカを作った基礎となっていることである。

国家の発展にとって、憲法は絶大な意味をもつ、ということだ。ならば、日本の憲法はどうだろう?そう思ったので、この本『憲法とは何か』を読んでみることにした。それでは、読み始めよう。


憲法についての議論が盛んです。(抜粋)

著者はこのように本書を始めている。憲法について、「平和や人権や公共の福祉を守り、われわれの暮らしをいつも支えてくれる」もの、つまり憲法は、権力を制限し、人々の自由と権利を守る働きをする、一般にそのような認識がる。それは、疑いのない事実である。

しかし、憲法には「長期にわたる深刻な戦争が実は憲法をめぐって行われる」ことなど別の側面、憲法の危険性がある。

憲法がつねにありがたい、明るい未来を与えるものだという夢が、幻想にすぎないかも知れないことに注意を向けるのが、本書のねらいの一つです。(抜粋)

憲法は変えれば良くなるというものでなく、どのように変えるかが重要となる。

また、本書は「憲法が立憲主義にもとづくものであることを常に意識し続けなければならない」という立場より書かれている。

立憲主義とは、

この世には、人の生き方や世界の意味について、根底的に異なる価値観を抱いている人々がいることを認め、そして、それにもかかわらず、社会生活の便宜とコストを公平に分かち合う基本的な枠組みを構築することで、個人の自由な生き方と、社会全体の利益に向けた理性的な審議と決定のプロセスとを実現することを目指す立場です。(抜粋)

これを実現するために「公と私の分離」「硬性の憲法典」「権力の分立」「違憲審査」「軍事力の限定」などの制度を用意している。

根底的に異なる価値観がそのままぶつかり合うと平和や社会生活や国際関係が困難となるため、この立憲主義が必要となる。逆に、価値観の違いを直視せよという立場からすれば立憲主義は「中途半端」な立場となる。

冷戦の終結は、この立憲主義の勝利をもたらしたはずでした。しかし、そのことの意味は、なお十分には認識されていません。平和、安全、環境など、国境を超えるさまざまな危険が問題となる今日、そのことの意味を改めて振り返ることも、本書の目的の一つです。(抜粋)

ここを読むと、「ポピュリズム」は、この「立憲主義」と真逆なものであるということが分かった。『ポピュリズムとは何か』には、ポピュリズムでは、他の意見を持つ人々を認めず「我々人民こそが正統」であると主張するのが特徴である書かれていた。(つくジー)


関連図書:
上村 剛 (著)『アメリカ革命』、中央公論新社(中公新書)、2024年
ヤン=ヴェルナー・ミュラー(著)『ポピュリズムとは何か』、岩波書店、2017年


目次
はしがき [第1回]
第1章 立憲主義の成立
1 ドン・キホーテとハムレット
2 立憲主義の成立
3 日本の伝統と公私の区分
4 本性への回帰願望?
5 憲法改正論議を考える
6 「国を守る責務」について
第2章 冷戦の終結とリベラル・デモクラシーの勝利
1 国家の構成原理としての憲法
2 ルソーの戦争状態論
3 三種の国民国家
4 シュミットと議会制民主主義
5 原爆投下と核の均衡
6 立憲主義と冷戦後の世界
7 日本の現状と課題
第3章 立憲主義と民主主義
1 立憲主義とはなにか
2 民主主義とは何か
3 民主主義になぜ憲法が必要か
第4章 新しい権力分立?
1 ブルース・アッカーマン教授の来訪
1-1 モンテスキューの古典的な権力分立
1-2 「新しい権力分立」
2 首相公選論について
3 日本はどこまで「制約された議会内閣制」といえるか
4 二元的民主政 —- 「新権力分立論」の背景
第5章 憲法法典の変化と憲法の変化
1 「憲法改正は必要か」という質問
2 国民の意義と憲法改正
3 実務慣行としての憲法
4 憲法とそれ以外の法
第6章 憲法改正の手続き
1 改憲の発議要件を緩和することの意味
1-1 なぜ多数決なのか —- その1
1-2 なぜ多数決なのか —- その2
2 憲法改正国民投票法について
終章 国境はなぜあるのか
1 国境はなぜあるのか —- 功利主義的回答
2 国境はなぜあるのか —- 「政治的なもの」
3 国境はいかに引かれるべきか
4 国境線へのこだわり

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