[再掲載] 孫子の兵法
雑喉 潤 『『史記』の人間学』より

Reading Journal 1st

「『史記』の人間学」 雑喉 潤 著 
[Reading Journal 1st:再掲載]
(初出:2005-08-05)

第5章 春秋戦国の立役者 3.戦国の四君、4.孫武と孫臏、5.楽毅と田単

孫子の兵法の孫武の話から

孫武を召しだして、
「君の兵法書十三篇は全部読んだ。実地の調練をみせてくれぬか」
ためしに宮中の美女百八十人を二組に分けて整列させ、王の寵姫ちょうき二人をそれぞれの隊長にした。全員に矛ほこをもたせ、
「前といったら胸を見よ、左といったら左手、右といったら右手、後といったら後を向け」
こう伝えると刑罰に使うまさかりなどを並べた。再三説明を繰り返し、太鼓の合図で、
「右!」
というと、女たちはどっと笑った。孫武は改めて同じ説明をくどいほど繰り返し、また太鼓を鳴らして、
「左!」
というとまたげらげら笑うばかりである。孫武はいった。
「さきほどはわたしの落ち度であったが、今度は違う。命令が明らかなのに従わぬのは、隊長の責任である」
まさかりで隊長二人の首を斬ろうとした。テラスで見物していた王は飛び上がった。伝令を飛ばして、
「孫武の腕前はわかった。最愛の女を斬らないでくれ」
と伝えたが、孫武は、
「もはや命をうけて大将になったからは、君命もお受けできないことがあります」
ついに二人の首を打って披露し、次位の二人を隊長にした。今度は太鼓の命令通り、すべて整然と行われ、だれ一人声を立てない。孫武は報告させた。
「調練は完了しました。王が命令を下されましたら、このものたちは、水や火の中でも飛び込むでしょう」(抜粋)

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