[再掲載]「「俗」なおかしみ」(西遊記)
井波 律子『中国の五大小説』(上)より

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(初出:2008-07-17)

「中国の五大小説」(上) 井波律子 著

『西遊記』の巻 — 巨大な妖怪テーマパーク 五 「俗」なおかしみ — 神仙、如来のふるまい

これ以降は、次々と妖怪や災難に遭遇して、それを何とか解決するというエピソードが続く。

『西遊記』では、三蔵一行をはじめ登場する神仙・仏、菩薩などが妙に俗っぽいところがある。

物語構想じたいは奇想天外SF風であるにもかかわらず、登場人物はそろいもそろって妙に下世話にけているうえ、神仏が大挙して登場するにもかかわらず、いっこうに神秘性がなく、なんとも人間くさくって俗っぽい。「聖」のなかにこうしてどんどん「俗」を盛り込むことによって、ユーモラスな落差が生じているのですが、これはむろん作者による物語世界を面白くするための意識的な操作にほかなりません。これはたいへん成熟した描き方であり、『西遊記』が大人にとっても上質の読み物である最大の理由だといえるでしょう。

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