『キリスト教入門の系譜』 岡本 亮輔 著
[Reading Journal 2nd:読書日誌]
第4章 暁の星の司祭二人 ―― カトリック知識人の登場(その1)
今日から「第4章 暁の星の司祭二人」に入る。ここまでプロテスタントの影響下にあった人々が取り扱われていたが、第4章では、カトリックの知識人岩下壮一と戸塚文卿を取り扱う。
本章は、まずプロテスタントの対比によりカトリックの教義が書かれ、その後、岩下壮一、戸塚文卿について書かれている。そこで、“その1”でカトリックの教義を“その2”で岩下壮一を“その3”で戸塚文教についてまとめることにする。それでは読み始めよう。
正邪の番人 — 聖人への道
まず、プロテスタントと対比しながら、カトリックの特徴を押さえておきたい。(抜粋)
カトリックとプロテスタントの教会、権威の理解や礼拝の違い
プロテスタントの教会は、一般に質素で飾り気がない。教会は教会堂という建物よりも、信者のあつまりと見なす傾向が強い。
一方、カトリックの教会は、建築や装飾において美と壮麗を追求する。カトリックの教会は儀礼のために整えられた聖なる空間と見なされる。
プロテスタントとカトリックでは、権威(聖書・教会組織・伝統)の理解や礼拝の構成の重もみづけが異なる。
プロテスタントでは、聖書と説教を核とし、カトリックは秘跡と典礼を中核に据える。カトリックでは、教皇を頂点とし、司教・司祭・助祭という聖職位階制があり、一般信徒はその下に位置する。その地位や職務は教会法という独自の成文法で定められている。カトリックの司祭は、救済を司る専門職であり、原則として独身の男性しか就けない。司祭は、秘跡と呼ばれる儀礼を執行する。この秘跡には、洗礼・堅信・聖体・ゆるし・病者の塗油・叙階・結婚の七つがあり、聖体の秘跡が中心的な位置を占める。
一方プロテスタントは、カトリックの聖職位階制や儀礼を批判し、全能の神の前では誰人は平等であるとし、「万人祭司」の立場を取る。聖書を権威の源泉とし、牧師は理念上、一般信徒と同等である。
このように、プロテスタントが聖書の権威と良心の自由を強調し、制度や儀礼と距離を保とうとする傾向が強いのに対し、カトリックの教会法では、日曜や特定の祭日のミサへの出席は、信者の義務とされる。カトリックは制度と伝統に根ざし、儀礼を通じて信仰共同体の秩序を維持してきたのである。(抜粋)
カトリックとプロテスタントの信仰の違い
プロテスタントでは、流派ごとに信仰の基準はあるが、聖書の解釈は個人の良心や共同体の判断に委ねられている。個々の知識や経験に応じて信仰理解が変容しうるのがプロテスタントの特徴である。同じように、プロテスタントでは、社会問題や倫理的問題についても、聖書と良心に基づく判断が重視される。
一方、カトリックでは、何をどのように信じるかは教会組織が決定する。その手引きが、要理書であり、その内容が教会の公式見解となる。カトリックの総本山バチカン市国は、巨大な官僚機構を持ち、政府に相当する教皇庁、聖職者の任免を行う司省や聖職者省、慈善活動を担う支援援助省、秘儀や典礼を管轄する典礼秘跡省、聖人の認定を行う列聖省などがあり、そして信仰をつかさどるのが教理省である。カトリックとして何が正しく何が誤っているかは、この教理省により審査される。
カトリックの聖人認定制度
カトリックにはプロテスタント側から魔術的と評される要素が色濃く残る。その中でも象徴的なのが聖人にまつわる制度である。カトリックでは、英雄的な徳に道が行き方をした人物、信仰の命を落とした殉教者などが聖人とされるが、その認定プロセスは容易ではない。
- 各地で推薦された聖人候補者のうち、地元の司教が調査許可が出された者 ⇒ 「神のしもべ」となる
- 関連資料を精査し、英雄的な徳が認められる ⇒ 「尊者」となる。
- 候補者が殉教者でない場合は、第一の奇跡が必要となり、その奇跡が超自然的と教会が認定する ⇒ 「福者」となる(列服)。
- さらにもう一つの奇跡が認定される ⇒ 「聖人」となる。
このようにカトリック教会が膨大な労力を要する聖人制度を維持するのは、奇跡の魅力が大きいからだろと、著者は指摘している。
カトリック教会は全世界に広がる巨大組織であり、聖職位階制と教会法に基いて運営される。その点ではグローバル企業のような顔を持つが、同時に、聖人や奇跡のような神秘を制度内部に抱え込む。合理と神秘の共存 --- これこそがカトリックの魅力である。(抜粋)
カトリックの入門書の難しさ
このようにカトリックでは教会により教義が厳しく定められるため、その入門書には特有の難しさがある。組織人である司祭が、あまり個人的な思索などを語ること、教会が認めていない聖人や奇跡を吹聴することはタブーとなる。
正統性と秩序を守りつつ、奇跡や神秘をどう伝えるか。このバランスがカトリック入門の中心課題となる。(抜粋)

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