『人を助けるとはどういうことか』 エドガー・H・シャイン 著
[Reading Journal 2nd：読書日誌]
④ 支援の種類（前半）
今日から「④ 支援の種類」に入る。前章「③ 成功する支援関係とは？」では、支援の状況では、クライアントと支援者のバランスが悪いため、さまざまな罠におちいりやすいこと、そしてその罠について説明された。そして、最後に成功する支援関係を確立するためには、支援者がその役割を明確にして、クラインとの立場を確立する必要があることが述べられた。本章④は、そのために支援者が選択できる３つの役割についてである。
第４章は、”前半“と”後半”に分け、今日のところ”前半“では、支援者が知らないこと、クライアントが知らないことについてまとめ、”後半“において、支援者が選択できる３つの役割についてまとめることとする。それでは読み始めよう。
前章（その１、その２、その３）において、どんな支援関係でも初めのうちは適切な役割や公平さのルールが曖昧であるため、多くの罠に陥ることがわかった。そのため支援者もクライアントも演じるべき役割を選ぶ必要がある。
まず支援の状況においては、初めのうちはお互いに無知な領域が多い、そしてクライアントが不利で、支援者のほうが有利である。そのため、うまくいく支援関係を築くためには、互いの無知な領域について考え、徐々にそれを無くすことで、関係の不均衡を無くす必要がある。そして、その無知の領域を理解できれば、適切な役割を選ぶことができる。
支援者が選択できる役割に入る前に、前半では、支援者とクライアントが知らないことについての説明がある。
支援者が知らない五つのこと
ここではまず、支援の初めにおいて支援者が知らないことを５つあげている。
- クライアントは情報や助言、あるいは尋ねられた質問を理解できるだろうか
支援の状況で必ずしも支援者の与える情報、助言あるいは質問をクライアントが理解できるとは限らないということである。 - クライアントは支援者の提案に従えるだけの知識やスキルを備えているだろうか
支援者の提案をしてもクライアントがそれを行えるかどうかも初めのうちは支援者にはわからない - クライアントの本当のモチベーションは何か
クライアントが求めている支援が本当は違う目的がある場合がある。 - クライアントのおかれた状況はどんなものか
クライアントの人間関係や集団の帰属関係、文化的な制約なども支援者はわからないことが多い - クライアントは過去の経験から、どんな期待や固定観念、恐怖心を持つようになるか
クライアントは、過去の経験から支援者に対して相当の先入観を持っている。特に専門家が支援をする際には、その先入観により不安を感じたり身構えたりするため問題になる。
クライアントが知らない五つのこと
次に、支援者と同様に支援の初めにおいてクライアントが知らない５つあげている。
クライアントは、さまざまことについて無知の状態で支援される状況に入っていく。支援を受けるものは、求めるまえに関連情報をいくらか得ておくべきである。公式の支援については、特にそうであると言える。
- 支援者には助けをあたえるだけの知識やスキル、モチベーションがあるか
支援を求める前に、支援者が支援を与えるだけの能力があるかを確認する必要がある。 - この人に助けを求めれば、どんな結果が得られるか
支援の状況では、しばしばクライアントが求めるレベル以上の支援を与えようとする支援者がいる。クライアントは自分の限界を知っているので、支援の関係にのめり込む前に、必要なレベルでの情報を得るようにしなければならない。 - この支援者は信用できるか。状況を利用して何かを不当に売りつけたり強制したりする人ではないだろうか
セラピストやコーチ、経営コンサルタントなどの支援者が、関係が進むにつれて、実のところ何かを売りつけていると気づいて幻滅することがある。 - クライアントとして、私は提案されたことを実行できるだろうか
こちらが知りたいこと、覚えられること以上のことを支援者から教えられる場合には、クライアントはどうしてよいかわからなくなることもある。 - 支援を受け入れると金銭面や感情面、また社会的な面でどれだけの代価を払うことになるだろうか
どのような支援でも、相手に何らかのお返しが必要である。それは、その支援がのちに都合が悪くなっても支払う必要がある。
このように、支援者とクライアントが知らないことを確認した後、著者は次のように言っている。
支援者になりそうな人のジレンマはもはや明らかである。支援者は無知の領域が自分にあるだけでなく、クライアントもそれに苦労しているかもしれないと認識しなければならないのだ。支援者の課題は、必要な情報がうまく流れるように促すことである。（抜粋）
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