『成長を支援するということ』 リチャード・ボヤツィス 他 著
[Reading Journal 2nd:読書日誌]
10 思いやりの呼びかけ
今日のところは、最終章「10 思いやりの呼びかけ」である。ここでは、これまで出てきた事例をたどりながら、全体を俯瞰してまとめている。そして、最後にこの思いやりのコーチングの文化が少しずつ広がることが起こりうるとしている。それでは読み始めよう。
思いやりのコーチングの意義
多くの人は他者を気にかけ、助けようとする。気遣いの源は、学びや成長を持ちかけて人々を鼓舞したい、子どもを守ろうとする人々を励ましたい、といった願いなのかもしれない。また、他者が行動を改善したり、可能性を活かしたりするのを手助けした、という願いもあるかもしれない。あるいは心の奥にある愛から生じた気持ちかもしれない。(抜粋)
このように願いは気高いが、私たちはしばしばこれと正反対の行い、つまりいきなり他者の行動を直そうとしたり、変化のために特定の行動を指図したりしてしまう。これでは、たとえ善意による行動でも、ネガティブな感情やストレスを引き起こす。
現在、ナルシズム、独善、自己中心的な思考が蔓延している状況の中で、自己防衛的な行動をとらずに済ますには、他者を支援し、より良い人間関係を築くこと、他者を気遣い、鼓舞し、動機づけを与えることである。それにより自分自身もポジティブとなる。
優秀な支援者やコーチは相手のパーソナルビジョンを掘り下げることを助け人生や仕事に意味を与える。それは理想の自分に近づく道を歩む手助けとなる。
他者とポジティブな関係を築くための一番の武器は思いやりのコーチングである。そして他者との共鳴する関係は、伝播し支えとなる人々のネットワークにつながる。
効果的な問いかけをすることにより、相手のPEAを呼び出すことができる。反対にネガティブな問いかけや防衛的反応を引き出す質問は、NEAを呼び起こしてしまう。人はNEA寄りの活動の2~5倍のPEA寄りの活動が必要である。そしてこのPEAを呼び起こす活動は、1つか2つの活動を繰り返すよりも、多様な活動を用いた方が良いことも分かっている。
弱みを克服するよりも、パーソナルビジョンと調和する強みに焦点を合わせることで新たな可能性が開かれる。気分が高揚するような未来を思い描いてPEAを呼び起こすことも良い方法である。
誰かを支援するためには、支援者自身の準備が大切である。支援者はマインドセットを準備しておく必要がある。また、コーチングに適した瞬間を活かすためには、相手が内省や学びに対して準備ができているかをコーチの方が正しくキャッチすることが必要である。
どんなに善意があっても自分自身がNEAの影響下にいる時は、効果的な支援はできない。そのため支援者自身も日々再生の活動をする必要がある。支援者はコンディションを保ち、ポジティブな感情の伝染を広げる必要がある。支援しようとしている相手に必要なサポートが、コーチにも必要である。
夢への招待状
私たちが本書で強調してきた一番のテーマは、パーソナルビジョンを用いてポジティブな感情を呼び起こすことである。望まし終わりへつながる道をならすかのように、脳や感情のネットワークをセットアップしていく。(抜粋)
そして、われわれはひとつのビジョンを思い描くことができる。このような思いやりのコーチングは人々に共鳴した関係を築き人々の間に広がっていくというビジョンである。このようなビジョンが広がる可能性を高める方法に「恩送り」の実践がある。
「恩送り」とは、1日1回だけ、15~20分間、毎日違う人と会話して、相手が最良の自分、価値観、夢の生活、望ましい仕事、パーソナルビジョンの発見することを手伝う、ことである。
この短時間の会話により、相手はポジティブな感情を体験しパーソナルビジョンを発見することを助けるのである。そしてこのインスピレーションを受けた人々が今度は別の知り合いに会話をつなげていく。感情の伝染や社会的模倣の結果として、影響がとてつもなく大きく広がる可能性がある。
そして、最後に著者は次のように言って本書を閉じている。
本書の事例やアイデアを読み、あなたの人生、あなたの周囲の人々の人生において、ポジティブな変化のきっかけをつくってみたいと思ってもらえるなら幸いだ。他者を気遣い、他者の向上を鼓舞した結果として、あなた自身が希望、思いやり、マインドフルネス、遊び心を持っていることを、私たちは心から望んでいる。それこそが思いやりのコーチングの本質なのだから。(抜粋)
[完了] 全14回
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