『作家の仕事部屋』 ジャン=ルイ・ド・ランビュール 編
[Reading Journal 2nd:読書日誌]
マルセル・ジュアンドー – 私は生きた録音機です
マルセル・ジュアンドー (Marcel Jouhandeau) は、非常に多産な作家である。彼は最初司祭を目指しその後、文学士となった。彼は一九一四年にそれまで書き溜めてあった初期作品を破棄している。彼の著作は、他者、自我、神の3つのテーマがある。
仕事の方法
仕事の方法については、すべて本能的である。そして、自分は小説家ではない。自分の本領は《日録》である。
一九一四年、自分が書いたものをすべて焼き捨てる必要があった。かつて重大な道徳上の過ちを犯し、そしてその犯人が文学だと発見したからである。そして、その衝撃の後、自分が文学なしには生きられないことを悟り、そしてふたたび書きはじめるようになった。
自分は作品の創作などはしたことがない。作品のすべては真実である。わたしは幸運にも並外れた《怪物たち》と知り合うことができた。作品では、彼らが登場人物になっている。そして、ほんのちょっと演出をしただけである。でも、私には理解できないが、モデルたちが私に出会うと、恐ろしいほどに不機嫌になる。
幸い今日ではもう登場人物たちを創り出す必要がありません。私は自分の生れついた本性に従うことにしたのです。私はもう遠慮しません。起こったことをずばりそのまま言います。それが真実だという限りにおきて、そのほうがいいのです。(抜粋)
自分は意図をもって作品を創ったことはない。私は生きた蓄音機なので、何もかも録音してしまう。そしてつき合った一人ひとりが知らずに書物に協力をしてくれる。
作品の仕上げ方
つねに人工皮革の手帳を持ち歩き、何か面白いことを聞くたびに手帳に書きつける。散歩のあいだに短編がひとつうまれることさえある。そしてその覚書をあちこち拾い集めた断片を仕分けて形にする。昔は断片をファイルしているだけだったが、最近は一枚一枚に穴が開いていて、頁を自由に差し替えられるノートを使っている。自分のやっていることはそれらの覚書をとり出して文章をもっと練りあげたり、適切な表現を探すのに時間を使うだけである。そしてそのうち、一冊の本が出来上がる。
作品を書くときには、美化しようともせず、極まれに付け加えることはあるが、基本的には、切り詰めている。
仕事場の条件
暑さ寒さといった環境的条件には、気づきさえしない。しかし絶対に不可欠な条件は、仕事場は住む家の最上階でなければならない。
私は信者です。自分の上に空があることは容認します。容認できるのはそれだけです。(抜粋)
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