『負動産地獄 その相続は重荷です』 牧野知弘 著
[Reading Journal 2nd:読書日誌]
第3章 いらない不動産(後半)
中小ビル相続の困った問題
もらって困る非上場株式
シャッター通り商店街相続でおこること
親も知らない山林相続
超高級住宅地相続の恐怖
遺言でもらった不動産
中小ビル相続の困った問題
都市部などのオフィスビルの相続にも問題がある。このようなオフィスビルは、高度成長期から平成バブル期にかけて多く建てられた。このようなビルの多くが築40年から50年が経って建て替えの時期を迎えるが、その建て替えができない状態になっている。
マンション同様にビルでも築年数が40年を過ぎると大規模修繕が必要になるが、多くのオーナーがこの大規模修繕の費用を積み立てていない。いざ修繕をしようと銀行からお金を借りようにも多くのオーナーがオフィスビルを担保に銀行から本業ように運転資金や設備資金を調達しているので、融資を受けるには担保が乏しいケースが多くなっている。
そして今後、彼らを待ち受けているのが相続と事業継承です。(抜粋)
もらって困る非上場株式
親が持っている会社の非上場株式も相続する時に問題になることがある。非上場株式はどのくらいの価値があるかを計算すると大変な額になり相続する子供が払えない事例が増えている。そのため、早い時期から会計士、税理士などの専門家に評価額を依頼し、贈与の対策をとることが大切である。
非上場株式は、日ごろその価値をほとんど意識していないものですが、相続に当たっては意外な曲者です。最近では親の家業を継がない子供も増えていますが、親の会社を清算する場合の価値を含めて、あらかじめその資産価値を親子でよく確認し合っておくことが必要です。(抜粋)
シャッター通り商店街相続でおこること
地方都市の衰退と産業構造の変化により、地方都市では多くの商店街がシャッター通りとなった。このような、店舗付き住宅の相続も問題となっている。店舗付き受託の場合は、税制上の特典があり固定資産税も相続税も通常の住宅並みに優遇されている。しかし、これが二次相続になると、すでに子供は現地で生活していないため税制上の特典を得ることができなくなる。しかし、このようなシャッター通りの店舗を売ろうにも買い手がつかず、相続した子供は老朽化した店舗の管理と固定資産税に悩まされることになる。
親も知らない山林相続
地方にある山林は、相続であまり問題にされないが、これも厄介な相続財産である。現在多くの山林は経済価値を失っていて、また固定資産評価額が低いため登記がされていない。登記がされていない山林は、相続してもいざ売ろうとしても売れないので放置するより仕方がない。しかし、相続に際して登記が義務化され、また新たに地元の市町村に届け出が義務化されている。
この山林の相続に対して著者は、
相続登記の義務化に伴って、相続人全員の同意がなくても単独で登記を行うことができるようになったので、この機会に山林資産を整理、整備しておくことが良いと思われます。(抜粋)
と勧めている。(相続登記の義務化やそれに伴う規制緩和に関しては、ココを参照)
超高級住宅地相続の恐怖
東京の田園調布などの超高級住宅街の相続でも問題が生じている。このような超高級住宅地になると、土地の評価額はすぐに何億にもなってしまう。そのため二次相続では、納税用によほどのお金を持っていないと、家を手放さざるを得なくなる。しかし、このような優良な住宅地では、さまざまな建築協定があり、また販売価格も高額になるためになかなかマーケットでは売れない。
そのため、田園調布などの高級住宅地の遺産を継承するために、当該土地を担保にして資金を調達して、別の土地に賃貸マンションやアパートを建設し、そこから得られる収入で相続税を支払っていくなどの対策がとられるようになっています。しかし、継承することだけが目的で借金するのも、なんだか本末転倒な話に聞こえます。(抜粋)
遺言でもらった不動産
相続にあたって予めどのように相続の仕方を遺言によって決めることができる。被相続人が生前に財産目録を作成し遺言によって相続の形を示すことは、後に相続人が大紛糾することを避けるためにも重要である。しかし、最近この遺言によって執行された相続で、思わぬ不動産をつかまされるという事例が増えている。
本章で述べてきたように、地方の実家、流動性を失った郊外ニュータウンの戸建て住宅、老朽化したマンション、別荘やリゾマン、借金まみれの中小ビル、シャター通り商店街に残された店舗付き住宅、正確な場所も判然としない山林、売るに売れない高級住宅街など、漫然と相続してしまうと後に大変な苦労を背負いこむことになります。(抜粋)
そして、このような事態にならないように、
相続させる親のほうは、不動産を今後どのようにしていきたいか、誰に譲れば資産として生かされていくかを考え、必要のない不動産は相続前に換金しておくなどの処置をしておくことです。また相続人も、親の持つ資産をどのような考えで承継するか、マーケットも含めて事前によく勉強しておくことです。(抜粋)
といっている。
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