井波律子の『故事成句でたどる楽しい中国史』を読み終った。最終章に書いてあった『紅楼夢』の話(ココを参照)を読んで、この本『中国の五大小説』を思い出しました。
この本はそう言えば、昔のブログにあったよなぁ~と思いまして、再掲載することにしました。(え?もう一回、読め!・・・って、それは・・・そうだけどね)
でも、しかし『紅楼夢』自体は、実は下巻なんですけどね♬
(2025年3月8日)
(初出:2008-06-15)
「中国の五大小説」(上) 三国志演義・西遊記
井波律子 著 岩波書店(岩波新書) 2008年 860円+税
はじめに
この本で取り上げる中国五大小説は、『三国志演義』『西遊記』『水滸伝』『金瓶梅』『紅楼夢』である。すべて白話でかかれた長編小説で最初の四編は明代に完成・刊行され十七世紀前半の明末ごろから「四代奇書」と称された。十八世紀中頃の清代中期、曹雪芹により『紅楼夢』が書かれ、あわせて「五大白話長編小説(五大小説)」と目されるようになった。
五大小説はそれぞれ一語に凝縮して
- 『三国志演義』・・・・・・「武」 講史(歴史物)
- 『西遊記』・・・・・・・・「幻」 霊怪(神秘物)
- 『水滸伝』・・・・・・・・「侠」 侠義(任侠物)
- 『金瓶梅』・・・・・・・・「淫」 烟粉(色物)
- 『紅楼夢』・・・・・・・・「情」 烟粉(色物)
といわれている。すべて100回から120回の大部の小説である。
『三国志演義』『西遊記』『水滸伝』は宋代から元代にかけて講釈師が語った「三国志語り」「西遊記語り」「水滸伝語り」を母体とする。これらに共通する特徴は、「章回小説」である事である。章回小説とは初回から最終回まで、一回ずつ区切りながら、鎖状に回を連ね、語りすすめてゆくスタイルである。そして回題(表題)は、単句(一句)表現で、これを二則ずつまとめて一回としている。
このような方法は、単独の著者によって書かれた『金瓶梅』『紅楼夢』にも受け継がれている。中国白話長編小説とりわけ五大小説の面白さの源泉の一つはこの章回小説形式にあると言える。
この『中国の五大小説』上下は、同じく章回形式をとりつつ、それぞれまったく異質な物語構想によって展開されている五大小説の物語世界を、ストーリー展開に沿って探求しようとするものである。(抜粋)
上巻で取り上げる『三国志演義』と『西遊記』は、まったく異質の物語であるが、この二編は視点の置き方、人物描写の方法等において、深いところで共通するものがある。下巻の『水滸伝』『金瓶梅』『紅楼夢』には深い繋がりがある。『金瓶梅』の挿話はそっくり『水滸伝』を踏まえて展開しており、さらに『紅楼夢』は『金瓶梅』を踏み台にしつつ発展させている。
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