よろこばしい知らせ
エルンスト・H・ゴンブリッチ 『若い読者のための世界史』 より

Reading Journal 2nd

エルンスト・H・ゴンブリッチ 『若い読者のための世界史』
[Reading Journal 2nd:読書日誌]

一六 よろこばしい知らせ

第15章で、やっとアウグストゥスが出てきた。今日のところ第16章は、アウグストゥスの時代に生まれたキリストとキリスト教の話である。

アウグストゥスのローマの統治は、紀元前二七年から紀元後一四年までつづいた。そしてアウグストゥスの時代に、ローマの属州であったパレスティナで、イエス・キリストが生れた

聖書に書かれているのは、イエス・キリストが体験したこと、語ったことなのだ。人間にとって大切なことは何か。金持ちであるか貧乏人であるか、身分が高いか低いか、主人であるか奴隷であるか、知識があるかないか、それはもんだいでない。すべての人間は神の子である。そしてその父親の愛にはかぎりがない。神の前では、罪のない人間はいない。しかし神は、この罪ある者をいつくしむ。大切なのは、正義ではなく恩寵である。
恩寵とは何か、きみは知っているね。そう、「ゆるし、あたえる神の偉大な愛」のことだ。(抜粋)

イエスは各地を歩き布教した。彼は、ユダヤの王になろうとしているとして訴えられ、ローマの役人ポンティウス・ピタトゥス(ビラト)のもとで十字架に賭けられ処刑されてしまった。
しかし、彼の教えは貧しい人や悩んでいる人に新しいものを感じさせ、ローマ中に広まった。

正義よりも大切な神の恩寵の知らせ、偉大なる「善き知らせ」を。「善き知らせ」、あるいは「よろこばしい知らせ」とは、ギリシア語のエウ=アンゲリオン、ラテン語のエヴァンゲリウムのことなのだ。(抜粋)

ここで表題の「よろこばしい知らせ」(=恩寵)というのが出てきた。正義より大切な神の恩寵」とか言われてもなんだかわからないな、と思っていたら、「エウ=アンゲリオン」とか「エヴァンゲリウム」とか出てきた。あ・・・あのアニメの題名の意味って‥‥これですか?(つくジー)


キリスト教の拡大にローマの役人たちも放っておけなくなる。そして、キリストが十字架で死んでから約三〇年後つまり誕生から六〇年後に、残忍なことで知られるネロが皇帝となった。ネロは品位とか毅然とかをまったく持ち合わせていない男だった。そして、実の母、正妻、師、友人、親戚などの多くをころさせた。
そして、そのころ大都市ローマを大火事が襲った。その時ネロは、優雅にバルコニーで竪琴をかかえ、自作のトロイア落城の歌をうたっていた。そのことを知った民衆は激怒し、ローマに火をつけたのもネロの仕業だと噂をするようになる。そして、民衆の憎しみをそらすためにキリスト教徒をエスケープゴートにした。

ネロは、キリスト教徒をみつけしだい逮捕し、ざんこくな方法で処刑した。(抜粋)

しかし、このような迫害を受けてもキリスト教徒はおどろくべき勇気をもって耐えた。彼らは昼間に公の場で集会を持つことはできなかったので、墓地にカタコンペと呼ばれる地下に掘られた通路や小部屋に、夜な夜な集まった。そして、つづく百年の間ローマ全域で、善き知らせを信じた人々の数は増えていった。

そのころキリスト教徒と同じくユダヤ人も迫害されていた。ネロの数年後にエルサレムでローマに対する謀反が起こる。しかしキリストの誕生後七〇年に、エルサレムは陥落した。そしてエルサレムは破壊されユダヤ人たちはちりぢりになってしまった。

コメント

タイトルとURLをコピーしました