『成長を支援するということ』 リチャード・ボヤツィス 他 著
[Reading Journal 2nd:読書日誌]
6 パーソナルビジョンの力
今日のところは「6 パーソナルビジョンの力」である。明確なパーソナルビジョンは人生を変える力がある。そして、対象者がパーソナルビジョンを明確にする支援とは長く温めてきた夢を思い出させ、それを実現するためにプラットフォームを整備することである。
このようなパーソナルビジョンを発見することは、持続的な学びと変化を促進できるように導くためにも欠かせない。そして、このパーソナルビジョンの発見と発展はPEAを引き起こすための最強の方法である。
本章では、何がパーソナルビジョンであり何がそうでないかについて考察される。それでは読み始めよう。
パーソナルビジョンについて
パーソナルビジョンは、「起こりうる未来のイメージ」である。
パーソナルビジョンとは理想の自分や理想の将来を表現したものである。たとえば夢、価値観、情熱、パーパス、天職、アイデンティティの核といったものだ。やりたいことだけでなく、なりたい自分をも表明することである。(抜粋)
通常人は、何をしたいかを自問するが、どんな人間になりたいか、どんな人生を送りたいかについて考えることはあまりない。
支援者は、心から大事に思うもの、夢見るものを相手に尋ねる必要がある。そして、それは2~3年という短いスパンでなく、10~15年というスパンで考えることが推奨される。このように長いスパンで考えるとき、目先の物事や世間の期待に反応する必要が無いからである。そのためこのように尋ねる。
「あなたの人生がいまから10~15年後に理想的な(あるいは信じがたいほどすばらしい、驚くべき、最高のなどと言い換えてもいい)ものになっているとしたら、それは具体的にどんな状態ですか?」(抜粋)
このような質問は、対象者のPEAを呼び戻し、思いつかないような、創造的なアイデアや解決を引き出すことができる。
自分が向いたい先を知っていることは重要である。そのため何らかの形で、対象者のパーソナルビジョンを発掘し、コーチングを始めることは重要である。
ここでコーチングの研究では、ポジティブな未来を思い描くことを伝えてPEAに働きかける場合と、現在の問題に意識を集中するように伝えてNEAに働きかけるコーチングでは、PEAに働きかけるコーチングの方がゴールに向けて多くの努力を示した。
また、人生や仕事における変化は誰にでも起こるため、パーソナルビジョンは、定期的にアップデートする必要がある。私たちの人生やキャリアは5~9年(平均7年)のサイクルで動いているという研究結果がある。その自然なサイクルを利用することが勧められる。
目標とパーソナルビジョン
このパーソナルビジョンを話し合うことの反応は、単に目標をリストアップするときの反応とは大きく違う。目標を掲げることは熱望すること達成することを宣言する必要があり、多くの場合義務感が伴う。そのため義務感のストレスのため、脳内でネガティブな反応が始まってしまう。そうすると目標は、追究するもので無く避けるべきものになってしまう。
目標はそれでも心理学や経営学の研究では有用とされる。そして、どのように重要かは、実績志向指向か学習志向かによって変わる。まず、実績志向の場合は、外部からの評価や特定の目標の達成が重視され、学習志向の場合は、深い知識やスキルを身につけることが重視される。そしてタスクが複雑で適応を必要とするときは学びの目標があった方がよく、反対にタスクが比較的簡単な場合には実績の目標が良い動機づけとなる。
目標を設定すると、人はその目標に気を取られ、視野が狭くなり他の可能性を見渡すことができなくなる。このような状況では、変化を定着させることは難しい。真に変化を定着させるためには心の底からのモチベーションが必要である。
脳科学的な研究によると、単に目標をリストアップするようなときはNEAが活性化するのに対して、ビジョンを話し合うようなときはPEAが活性化する。
つまり、パーソナルビジョン(実質的には、理想の自己像、あるいは未来像と同義)を発見することによって、希望、興奮といったポジティブな感情が解き放たれ、成長と変化へのモチベーションや欲求が増進されるのだ。(抜粋)
パーソナルビジョンをつくりあげる
パーソナルビジョンをつくりあげるには、想像力と創造力のいるプロセスが必要である。そのためパーソナルビジョンを表現しようとする人を助けるのに一番良い方法は、夢を見るように促すことである。
ここで重要なことは、パーソナルビジョンは仕事だけでなくそれ以外の活動の中に深い目的や意義を見いだすことが少なくないということである。そのため支援者は、相手が希望や夢を全体的に眺めるのを、つまり人生のすべての側面を考慮するし統合することを、手伝うことが必要である。
コーチングの支援は、変化をもたらし、望ましい変化を維持するものである。そしてそれが燃え続けるためには、パーソナルビジョンという土台が必要である。
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