生存と繁栄(前半)
リチャード・ボヤツィス 他 『成長を支援するということ』より

Reading Journal 2nd

『成長を支援するということ』 リチャード・ボヤツィス 他 著
[Reading Journal 2nd:読書日誌]

5 生存と繁栄(前半)

今日から「5 生存と繁栄」である。この章では、「ポジティブな感情を誘引する因子(Positive Emotional Attractor = PEA)」と「ネガティブな感情を引き起こす因子(Negative Emotional Attractor = NEA)」について、その役割とバランスについて書かれている。

NEAは、生存する上で重要である。NEAのおかげで私たちは認知能力や感情を研ぎ澄まし、精神的、肉体的にも鋭敏な状態でタスクをこなすことができる。しかし、PEA、つまりストレスを軽減するホルモンーー安心感、希望、喜びと言った感情を呼び起こすーーによって、私たちは繫栄することができる。

そして、支援者はこのPEAとNEAのバランスの両方に働きかけ、両者の最良のバランスを見つけなければならない。対象者はこの双方の状態を行ったり来たりするため、支援者は変化や学びの動機づけを行い、支援者に双方のバランスを保つことを手助けする必要がある。また、本章では、本書のアイデアを支える脳科学についても探っていく。第5章 「生存と繁栄」は、”前半“と”後半“の2回に分けてまとめることにする。それでは、読み始めよう。

生存とNEA

人がただ生き延びるためにはNEAが必要である。対象者が病気や怪我のような場合はすぐに助けが必要な場合である。しかし、このような場面でも、多少はPEAでバランスをとり対象者を楽観的でやる気のある状態にしておくことが大切である。

このような非常時にはNEA(=生き延びる本能)が発動している。しかし、それでもコーチは対象者のPEAを呼び起こし変化に希望が持てるようにしなければならない。

自制を必要とする変化を起こすにはストレスが伴い、たいていは自分の中に貯めてあるエネルギーを消費する。しかし、それでもやらなければならないときもある。(抜粋)

そのような変化には、NEAが不可欠である。

「問題解決ネットワーク(AN)」と「共感ネットワーク(EN)」

ここで、脳内の2つのニューロンのネットワーク、

  1. 「問題解決ネットワーク(AN)」(従来の「タスク・ポジティブ・ネットワーク」)
  2. 「共感ネットワーク(EN)」(従来の「デフォルト・モード・ネットワーク」)

とPEAやNEAとの関係の詳細が説明される。

まず、PEAが呼び起こされると、共感ネットワークが活性化する。そして、NEAが呼ぼ起こされると、問題解決ネットワークが活性化する。

そして、このシステムに入り込む第3の要素が「再生システム」(副交感神経)「ストレス反応」(交感神経)の拮抗である。この副交感神経は多くの場合、共感ネットワークと連動し、交感神経は問題解決ネットワークと連動する。しかし、つねにこの組み合わせで連動するとは限らない。副交感神経も交感神経も、どちらのネットワークをも活性化しうる。

そのため、PEAとMEAとの連携は

  • PEA=EN+副交感神経+ポジティブな感情
  • NEA=AN+交感神経+ネガティブな感情

と等式化できる。

ここで大切な点は、「問題解決ネットワーク」と「共感ネットワーク」は、ほとんど重ならず「対立」する。つまり一方のネットワークが活性化すると他方のネットワークは抑制されることである。

  • 「問題解決ネットワーク」:問題解決、分析、意思決定、集中
  • 「共感ネットワーク」:新しいアイデアにオープンになること、視野を広げること、他者んに対して心を開くこと、モラルに敏感になること

ネガティブな衝動が人生を襲う時を「警鐘」と呼ぶ。この「警鐘」は、ストレス反応を引き起こし、私たちをNEAの支配下に追いやる。しかし、この「警鐘」は一部の人たちにとって、劇的な変化を起こす原動力になることもある。ショッキングな体験がポジティブな問題意識を引き出したり、核となる価値観を思い出させたりした時、「警鐘」は共感ネットワークのスイッチを入れ、PEAを呼び起こす。

この二つのネットワークは、異なる学びのスタイルに関連付けられる。

  • 「問題解決ネットワーク」学びのプロセスを抽象的に概念化するスタイル
  • 「共感ネットワーク」具体的な体験から学ぶスタイル
PEAやNEAと同じく、神経ネットワークも両方必要だ。共感ネットワークを使う時間が長すぎれば気が散ることが多くなり、ゴールに向かって進むのが遅くなる。問題解決ネットワークを過剰に使えば、モラルを逸脱するようなことが起こるかもしれない。(抜粋)

支援者は、対象者が新たなアイデアや変化の可能性に対してオープンになれるように支援するために、コーチングプロセスの早い段階で共感ネットワークを活性化させるべきである。それにより対象者にPEAが発動され5つのディスカバリーを開始するきっかけになる。

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