『成長を支援するということ』 リチャード・ボヤツィス 他 著
[Reading Journal 2nd:読書日誌]
9 コーチングに適した瞬間を感じ取る
今日のところは、「9 コーチングに適した瞬間を感じとる」である。
コーチングに適した瞬間を見極める方法は2つある。
- 今後を左右する危機的状況や学びの機会を観察する
- 相手がオープンになり、内省や学びの準備ができているときに、その機会を正しくキャッチする
9章は、コーチングに適した瞬間と相手が本当に準備ができている状態であるかを判断する方法について、さらに内省や自己開示についての安全な場所を創ることへのガイド、さらには「難しい」コーチングのケースとその対処法についてである。それでは読み始めよう。
コーチングに適した瞬間
研究によるとコーチングや支援に対して人が一番心を開きやすいのは、新しいポジジョンに就いたときである。さらにもっと広い視野で見ると、人生のキャリアの転換期がコーチングに適している。人生の転換期は、その人のビジョンを再考するには適した機会である。(この人生やキャリアのサイクルに関しては、ココ参照)
しかし、コーチがこのコーチングに適した瞬間を正しく認識したとしても、効果的な対応をしなければ機械を逃してしまう。そのため、タイミングと準備が必要である。
また、同じように相手も準備ができている必要がある。そのためコーチは相手のレディネス(準備ができている状態)を評価し強化することが必要になる。
ここで、ジェイムス・プロチャンスが考案した変化のモデルが紹介されている。このモデルでもレディネスに重きが置かれている。
- 計画前段階:対象者に変化の準備ができていない状態。変化の必要性や希望が明確になっていない。
- 計画段階:変化への準備は整わないが、意識しはじめ、準備をしようとしている段階。
- 準備段階:計画の準備が整った段階。
ここまでが、レディネスであり、その後に行動段階と維持段階につながる。
このコーチングに適した瞬間に際して注意する必要があるのが、コーチングをすべき時に、アドバイスや解決策を与えてしまわないようにすることである。
思いやりのコーチングとは、相手がどんな人間になりたいか、理想の未来では何を達成したいかという大枠に、状況やチャンスをはめこんでいくのを手助けすることだ。そうした大きな枠組みは、相手が自分のなかにあるリソースを引きだす手助けとなる。このリソースがあれば、現在の状況がどうであろうと、学び、変化し、有意気かつ継続するやり方で成長できるようになる。(抜粋)
コーチングが難しいケース
現実に満足している場合
対象者が現実に満足している場合は、理想の自分やパーソナルビジョンをつくりあげるようにうながしても、難しい場合がある。
人によっては、意図的変革のプロセスが望ましい変化を起こして理想を達成するためのもので無く、すでに達成された理想を維持することである場合がある。
このような場合には、すでに作り上げたすばらしい人生をより堅固なものにし、持続する方法を思い描きビジョンを表現する方がよい。
抑圧的、過酷な環境にいる場合
戦争状態の国、宗教的、経済的、精神的な弾圧がある場合は、生存に全神経を使っているため、将来の希望に焦点を当てることが難しい。
制限の厳しい環境にいる人々にコーチングをするとき、最善のアプローチは相手の核となる価値観 --- 何が正しく、何がよく、何が本当か、といったことに関する信念 -- に意識を集中することだ。核となる価値感はその人の存在や人生の土台であり、その土台の裏づけがあってこそ日々のふるまいや行動をじっくり考えられるからだ。(抜粋)
厳しい環境にいる場合は、そのほうが10~15年先を見据えたパーソナルビジョンを組み立てるよりも現実的である。
両立不能な2つの理想に引き裂かれている場合
両立不能な複数の夢を持つ人の場合は、その優先順位に焦点を当てる必要がある。その複数の夢の中で出来ることは何かを考えることを支援する必要がある。
すでにかけたコストが大きすぎて路線変更ができない場合
現在の状況は自分の夢とは違うが、すでにかけたコストが大きくそれを手放せなくなっている場合は、「長期的なビジョン」にこだわらず「現在の行動」に焦点を移した方が良い場合がある。
他者が規定した自分にとらわれている場合
親などの他者の規定した人生にとらわれて、自分独自のビジョンを描けない人へのコーチングでは、自分を分析し心の声に従うように促すことが必要である。
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