『作家の仕事部屋』 ジャン=ルイ・ド・ランビュール 編
[Reading Journal 2nd:読書日誌]
ミシェル・トゥルニエ – 私は泥坊かささぎに似ている
ミシェル・トゥルニエ (Michel Tournier) は、四十三歳で初めて小説を発表した晩成の作家である。そして、三から五年に一作という寡作の作家でもある。しかし、その成功は圧倒的であった。彼は最初哲学を目指したが、教授資格試験に失敗したため次善の策として小説を書いた。
仕事の方法
自分は想像力にかけているため、完全な創作の部分はごく僅かしかない。小説の場面場面は現実や他のものから借りてきている。
私は泥坊かさぎに似ています。あちらこちらから自分の気に入ったものを拾い集めてきて、自分の巣に貯め込むのです。問題は、それから一冊の書物が出てくるまで、こういった異質なものをすべてかきまわすことです。(抜粋)
仕事の進め方については、まず環境の問題がある。仕事をするためには、自分の隠れ家を作ることに成功しなければならない。私は田舎の大きな家に一人で住んでいるので、ある主題が思いつくと、その主題に関する物を蒐集して貯め込む。小説の一篇一篇が膨大な量の文献を要求する。四年ほどたって本が出来上がるころには、屋根裏からほとんど出ることがない状態になってしまう。
自分は非常にゆっくりとペンを使って仕事をするため白い頁をまえにしたときの不安や苦痛をしらない。本当のところ、自分は哲学者としてのキャリアを夢見たが、それが果たせなかったため、もうひとつの手段として小説を書く。自分の文学上の問題は、言わなければならない微妙で難解なことを、いかにして明晰かつ快いものにするかである。
執筆の秘密
執筆での秘密のひとつは、小説の結末を冒頭よりも先に書くことである。そうすれば自分の行先を予見でき、途中で挫折することはありません。その後、厳密な場面構成へと移る。
書物はつねに、中程に位置する危機(『魔王』の場合は宣戦布告)によってわけられた二つの斜面から成り立っています。対応関係を得るためには、これらの二つの斜面について仕事を同時に進行させるだけで十分です。必要があれば私は躊躇なく後もどりして書きます。(抜粋)
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