ロベール・パンジェ
ジャン=ルイ・ド・ランビュール 『作家の仕事部屋』 より

Reading Journal 2nd

『作家の仕事部屋』 ジャン=ルイ・ド・ランビュール 編
[Reading Journal 2nd:読書日誌]

ロベール・パンジェ – もっとも難しいのは冒頭の一句です

ロベール・パンジェ (Robert Pinget) は、弁護士となった後、画家を志しパリに向かった。そして、その後に作家となる。著者は、パンジェをヌーヴォ―ロマン派に近い作家としているが、パンジェ自身はそれを否定している。

仕事の方法

仕事の方法は、いわば盲滅法に仕事をして、そのあとで、モザイクか縮れ織りの下絵のように、一挙に自然出てきたものを整理する。

その場では、想像のメカニズムをとらえることはできない。分かっているのは表出されるべきものがあることだけである。いずれ小説になるはずだということだけである。

結局、もし仕事の方法があるとすれば、それは、日々ペンを走らせることによって、場合によってはそういうプロセスを始動させることから成ると言ってもいいと思います。詩人にとって書くこと以外の現実があろうはずがありません。(抜粋)

自分は家に閉じこもって生活を送っている。毎日家で何の役に立つか分からない文章をあれこれ書いている。小説にとりかかっているかとかにより集中度は違うが、場所と関係なく仕事ができる。

重要なのは、霊感を呼び覚ますために飲み食いしていない状態で始めることである。

ですから、私は皆と同じように朝起きて、いっさい飲み食いせずに仕事にとりかかります。三十分か四十五分ぐらい。もっと正確に言えば、文章をひとつ生み出すまで。メカニズムを始動させるためには、原則としてそれで十分なのです。それから私は軽い朝食をとります。そのあとは、夕方まで続けさえすればよいのです。(抜粋)

小説の書き方

小説の書き方については、いうことが何もない。自分には抑えがたい欲求があるだけである。最初のころは、小説を膨らませることが一番の問題だった。最初の短編は、二頁か三頁を越えることがなかった。そして十年かけて五百頁を越えるような長編を書けるようになった。

プランについて

小説を書くうえで最も難しいのは冒頭の一句である。この一句が精神に並外れた集中を要求する。

小説にはあらかじめ想定された構造などない。先を見通して予定を立てようとしたら言葉が閉じ込められてしまう。しかし大部の小説で登場人物が増えるにつれて、あらゆる種類のプランや素描、登場人物リストを作らざるを得なくなった。それは、矛盾を起こさず書き続けるためである。

自分の書物一冊一冊のそれぞれに統一性を与えているのは、《口調》である。その書物ごとに語彙の選択があり、口調が変わっている。

作品の冒頭の一句からある特定の調子を与えようとしている。その調子が書物全体の特徴となることに気を配っている。そのため一定の間隔をおいて、自分の書いたばかりの部分を十頁ほど前に戻って読み直す必要がある。

読み返しながら、いわばそのあとにつづく部分を呼び戻すんです。それは同時に用心でもあります。そうすることによって、自分の想像力が道に迷わないように見張るのです。それはまた、場合によっては自分の仕事の方向を修正する。〈唯一の〉手段でもあります。(抜粋)

執筆の不安

自分は仕事において、決して身についたとは思わない。理想的にはひとつの自分の調子を見つけ、その調子で書き続けることである。しかし、同じことを二度繰り返すことができない。そのため一冊書き終わるとまた別のものを見つけなければならない。

仕事にとりかかるまえの私は、不安に胸を締めつけられています。書き終えた時も同じです。ただ仕事だけが私を慰めてくれる。それは私にとって呼吸と同じくらい必要なのです。(抜粋)

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