J・P・マンシェット
ジャン=ルイ・ド・ランビュール 『作家の仕事部屋』 より

Reading Journal 2nd

『作家の仕事部屋』 ジャン=ルイ・ド・ランビュール 編
[Reading Journal 2nd:読書日誌]

J・P・マンシェット – あまり長いあいた人を殺さずにいてはいけない

J・P・マンシェット (Jean-Patrick Manchette) は、暗黒小説の《若い狼たち》と呼ばれる作家の一人である。ガリマール社の探偵小説叢書《セリ・ノワール》からも作品を発表している。作家になるまえはシナリオ・ライター、ポルノ映画の助監督、《セリ・ノワール》に収めるアメリカ推理小説の翻訳、労働組合の事務員など職を転々とする。彼は《セリ・ノワール》を《赤旗》に変えようとしたと言われている。

仕事の方法

作家としては、まだなりたてのため仕事の方法というと大げさすぎる。長い間、食料品やの勘定書が払えるかが唯一の気がかりだった。いろいろな仕事をこなしていくうちに、一種の処世術は身につけた。

《セリ・ノワール》の仕事

《セリ・ノワール》の仕事の場合は、たとえば「あまりにも長いあいだ人を殺さずにいてはいけない」などの規則があり、共著の場合は、相手方と場面場面を議論しながら進めた。

小説の作り方

最初にあるのは、ひとつの抽象概念だけである。それを、三ヶ月、一年、ときには三年も温める。そしてそれが全体にぴったりとした形が見つかったときにやっと書きはじめる。

着想は多くの場合、映画から借りてくる。時にアメリカの暗黒小説から借りてくることもある。それぞれの場面が大変面白く書かれている場合、それを必要不可欠な修正のみで満足できる。

文章自体も、以前に、原稿の下読みや翻訳を職業としていたため、目に留まったものからかすめ取る習慣が残っている。

フランスの探偵小説は、伝統的に《男尊女卑》的な心性にたよっている。一方アメリカの探偵小説は、人間存在の暗黒面と、そこに由来する暴力とを強調しているので、政治的な立場を生じさせるために理想的な道具立てとなる。

問題は、アメリカ人がアメリカについて書くことを、フランスでどのようにするかである。社会的・政治的現実や地理的現実について、わたしは新聞の社会欄を利用して、それをスクラップして利用している。

そしていつも地図をたよりに現地に向かって調査をする。小説の登場人物の道筋などは実は厳密に同じである。私は明確な細部にこだわりがある。

また、わたしも執筆には万年筆とサイン・ペンを好んでいる。

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