ミシェル・レリス
ジャン=ルイ・ド・ランビュール 『作家の仕事部屋』 より

Reading Journal 2nd

『作家の仕事部屋』 ジャン=ルイ・ド・ランビュール 編
[Reading Journal 2nd:読書日誌]

ミシェル・レリス – 書物の一部は犬の散歩のあいだに出来上がる

ミシェル・レリス (Michel Leiris) は、《告白の専門家》と呼ばれる詩人である。かれは告白文学を書き進め、告白文学に新たな地平を開いた。その一方で、アフリカを専門とする人類学者でもあった。彼はこの二つの領域での活動を人間の探求という営為と見なしている。

仕事の方法

G・K・チェスタトンの小説に登場する警官のことを覚えておいででしょう。彼の捜査方法は、街路を歩きまわりながら、目についた奇妙な細部を残らず次々にメモしていくことなんです。私の仕事の方法もいささかそれに似ています。ある日、あるいは別の日に、私の胸の奥深いところに反応を起こさせるすべてものに私はしがみつくのです。そしてそれがまるで一本の糸でもあるかのようにそれを手繰り寄せ、他のものを表面まで引き上げようとするのです。(抜粋)

このようなやり方に霊感を与えてくれたのは、プルーストである。それと同時にシュールレアリズムとフロイトに夢の重要性を教わった。

また、私は関心があることはどんな時でもカードに書きとめている。それは人類学者の習慣かもしれない。

実際の執筆に関しては、出来るだけ仰々しくならないように心掛けている。そのため立派な仕事机はあるが、それは使わず、寝室のテーブルで書く。時に大部の参考書を引くために書斎との間を行き来するが、それも良い気晴らしとなっている。

時間については偶然にまかせるほかはない。週末は完全に仕事と犬の散歩にあてているが、犬の世話に使う時間はわかるが、仕事となるとよくわからなくなる。

そもそも、書物の一部は、まさに犬の散歩のあいだ、私の頭のなかでできあがるのです。(抜粋)

そして、夜など書いているはずの時間は、ただ暇つぶしをしていることもある。

本の構造は事前に全く考えない。書き進めていくうちに本の形自体も変化していく。美しい小説を書こうと夢見たこともある。しかし、結局それを破り捨てる事になった。

結局、私の作品のなかに創造を見出すためには他所を探さなければならないのです。諸元の素材をなすカードや覚え書の配分の仕方など。これらの材料を相互に連結させ、巧妙な組合せを見つけ出し、たとえば二つの事実のあいだの隠れた絆を明らかにするためにちょっと筆を加えるようなことが重要なのです。(抜粋)

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