『作家の仕事部屋』 ジャン=ルイ・ド・ランビュール 編
[Reading Journal 2nd:読書日誌]
ジャック・ローラン – 手で書く書物もあれば口述する作品もある
ジャック・ローラン (Jacques Laurent) は、いくつかのペンネームを使い分け、多彩な活動をした作家、ジャーナリスト、歴史家である。彼はセシル・サン=ローランの名前で通俗小説を書き、ジャック・ローランの名前では、心理小説を書いた。
仕事の方法
仕事の方法は、ジャック・ローランとセシル・サン=ローランでは、異なる。前者は形の問題に取り憑かれていて、後者は歴史小説や大衆小説に属している。そのため、仕事の方法も別々となる。
まずジャック・ローランという名で発表する書物は手で書く。そして、セシル・サン=ローランは、秘書に口述し、彼女がタイプで打つ。そして仕事のする日は二つのサイクルに分かれている。午後のはじめは仕事道具をもって、スナックへ出かけて執筆に没頭する。仕事しているときは周囲の騒音などはまったく耳に入らなくなる。そして夕方六時くらいになると、最低必要な家具を入れた口述のために借りた部屋にむかい、八時まで時には九時半ごろまで口授をつづける。
作品の創作方法
セシル・サン=ローランは、本当の歴史学者よりも博学である必要がある。歴史小説を書くためには、自分の描く時代の日常生活を内側からよく知らなければならない。そのため作品を書き出すまえに、図書館で、数限りない細部を知るために孤独な作業を行う。作品はすべてが正真正銘の事実に基づいていなければ自信が持てない。
過ぎ去った時代の感受性のなかに浸りきるために、いわば図書館と口述のあいだになされる仕事、つまり夢想にふけるという仕事にわたしは没頭します。ふつうは朝、何時間か、時には夜、寝るまえに、登場人物たちのことをあれこれ考える必要があるのです。(抜粋)
作品のプランに関しては、ジャック・ローランの場合は、筋は簡潔なものであるので、きわめて簡単な図式だけである。そしてセシル・サン=ローランの場合は、綿密なプランを練りあげる。具体的には、それらのプランは円の形をとり、紙を覆い尽くすこれらの円が有機的に結びつく。そしてある円は次第に膨れ上がり他の円はしぼんでしまう。口授するときに、このプランを目の前に置いておく。
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