「戦わなければならなかった理由」
加藤陽子『それでも日本人は「戦争」を選んだ』より

Reading Journal 2nd

『それでも日本人は「戦争」を選んだ』加藤 陽子著
 [Reading Journal 2nd:読書日誌]

2章 日露戦争 戦わなければならなかった理由

日露戦争直前に日本はロシアと交渉した。この時、日本が言質を取りたかったのは、韓国における日本の優越権である。

ロシアは、韓国については日本が勢力圏に入れてしまうのを認めなさい、と日本は主張していました。そのかわり、確かにロシアの満州占領はまずいけれども、しかし、満州における鉄道の沿線はロシアの勢力圏としていい、中東鉄道とその南支線などはロシアが「特殊なる利益」をもっていると日本側はみとめます、という主張です。(抜粋)

これに対するロシアの答えは、そもそも「日本は満州について論じる資格がない」、「韓国における日本の優越権も認められない」としたうえで、次の条件を認めれば韓国における日本の優勢なる国益を認めていいというものだった。
その条件とは、

  1. ロシアが朝鮮海峡を自由に航行できる権利を日本側が認めること。
  2. 北緯三十九度以上の韓国を中立化して、日本が韓国領土の軍略的使用をしないこと。

で、あった。

この韓国に関するロシア側の提議は、日本側にとっては絶対に認められなかった要求でしょう。元老や首相、閣僚らはみな、大国ロシアに対する戦争に慎重でしたが、ロシアから返ってきたのはかなり厳しい条件だった。朝鮮半島、韓半島の軍略的使用をしちゃいけないというのは、かなり強い縛りです。また、朝鮮海峡をロシア艦隊が自由に航行できるというのでは、まさにシュタイン先生の警告の通りになってしまいます。(抜粋)

戦争をしたくなければロシアはもう少し妥協的な案を出すこともできたはずだがなぜこのような返答となったのか?ここで著者は、ロシアがこれほど韓国問題を重視しているとは気づいていなかった節があるといっている。それは、この時、日本がロシアを非難するために「満州についての開放」だけしか言ってなかったからであるとしている。

アメリカやイギリスを味方につけるためには、大義がいるが、英米にとって韓国問題はすでに過去の問題となっていて、この時、死活問題だったのは満州だった。

大豆という世界的な輸出品を産する中国東北部をロシアが占領したままにするのか、中国の首都である北京にすぐ近い位置にロシアの軍隊がいて、陸からも海からもロシアが中国に最も影響力を及ぼせるような状態は、嫌だねぇ、このあたりの事情を日本側もよく理解していて、ロシアを非難する際に、韓国のことはあまりいわずに、満州、あくまで、満州の門戸開放、という。(抜粋)

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