『ネガティブ・マインド : なぜ「うつ」になる、どう予防する』 坂本真士 著
[Reading Journal 2nd:読書日誌]
おわりに、あとがき
おわりに
本書の最後に、著者は生きることの絶望、自殺の問題を取り上げている。
絶望的になった人は、自分の考え方が論理的におかしくなっていても、自分でそれに気づくことが難しくなっている。その時に助けることができるのは、比較的客観的に物事を見ることができるまわりの人である。しかし、そのような時に論理的に説得しても徒労に終わることが多い。
したがって、こういった場合、相手の認知の歪みを責めたりせずに、じっくりと時間をかけて話を聞くことが重要である。そういう状況になったらそんな考え方をしても仕方ないかなと、共感を示しながら話を聞く。まずはそのことが重要である。(抜粋)
自殺は、本人の意思というより、精神的な病気のために生じた歪んだ認知によって死へと追い込まれているのである。第4章で示したのは、まだそれほど追いつめられていない時に自分で行うことができる方法であるが、追いつめられてしまった場合は自分でできる対処も限られてくるので、周りからのサポートが重要になる。
自殺を打ち明けあけられたり、ほのめかされたりした場合は、じっくり話を聞くことが大切である。また、うつ病が疑われる場合は、病院、出来れば精神科の受診が必要である。
このような悩みがある場合にサポートしてくれる機関として、NPO法人ライフリンクのホームページを紹介している。
あとがき
あとがきでは、著者がなぜ現在までネガティブな心理に対して社会心理学的な立場から研究していたかが書かれている。
まず、卒論の関連文献として読んだ『知的好奇心』と『無気力の心理学』を読んで「やる気」と反対の「無気力」に興味を持ってしまったという。
そして、なぜ臨床的の場でなく社会心理学的な研究を続けているのかについては、次の3つの理由を挙げている。
- 基礎心理学と臨床心理学とをつなげたいという思い。日本の現状では、認知行動療法などを除けば基礎と臨床の架橋作業進んでいないので、この現状を変えようと基礎心理学側から活動をしている。
- 心理療法を受ける一般の人々への情報提供をしたいという理由。認知心理学的や社会心理学的な視点を取り入れた一人称-三人称的な視点(ココ参照)の説明を一般の人にも知ってもらいたい。
- 予防につなげるために、一般の人にうつになる仕組みをしってもらい、自分のコントロールや周りの人の援助を受けるなどでうつを予防することができるかもしれないという理由である。
関連図書:
波多野 誼余夫 (著), 稲垣 佳世子 (著)『知的好奇心』、中央公論新社(中公新書)、1973年
波多野 誼余夫 (著), 稲垣 佳世子 (著)『無気力の心理学 改版』、中央公論新社(中公新書)、2020年
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