『モチベーションの心理学 : 「やる気」と「意欲」のメカニズム』 鹿毛雅治 著
[Reading Journal 2nd:読書日誌]
第5章 学びと発達―成長説(その1)
1 成長へのモチベーション(前半)
今日から第5章に入る、いままで「目標説」「自信説」の2つのミニセオリーが紹介された。第5章は、ミニセオリーの3つ目、「成長説」である(ココを参照)。1節では、まず成長とモチベーションについて概説されている。
(「成長へのモチベーション」は長いため、「前半」と「後半」に分ける)
まず著者はアポロ11号で月面着陸をしたアームストロング船長の言葉を引いている。
われわれは、次に1歩を踏み出したくなったり、さらにもっと冒険をしたくなったりする。人間は本来、好奇心に富む存在なのである。
謎が驚異の念(wonder)をかきたてる。その気持ちこそ、人類が持つ「わかろうとする欲求」の土台なのだ。(抜粋)
このwonderは、訳しづらい語であるが「不思議、驚き、疑問によって高ぶった気持ち」という意味であるという。
子供たちをいれば明らかなように我々は生まれながらにしてワンダーという、感慨に満ちあふれた感覚、澄み切った洞察力、美しいものや畏怖すべきものへの直観力を持っている。そして、学問や文化の歴史的発展、文化の深化のすべてがワンダーに導かれた先人のモチベーションの賜物である。
われわれ人間はワンダーに導かれた学びを通じて発達する。これをモチベーションの観点から理解すると第2章の冒頭で紹介されたモチベーション3.0である。
このようにモチベーションが学習や発達と不可分であり、人には環境と関わりあいながら学び、成長しようとする生来の傾向があるという考え方を、以下では「成長説」と総称し、概観していくことにしよう。(抜粋)
ここで著者は、人は怠け者ではないことを示すために「感覚遮断=(ある程度長い時間、環境の変化を抑え、可能な限り刺激量自体を減らすこと)」の実験を説明する。
この感覚遮断の実験は、徹底的に何もしない状況を人為的につくりだし、そこでの様子を観察するというものであるが、このような状況に人は耐えられずに結局逃げ出してしまう。
人は、単に生理的な要求を満たして楽をしたいだけの怠けものではない。多様な刺激が当たり前のように存在する環境と積極的に関わり合いながら生活したいのである。この歴史的な研究は、「快を求め不快を避ける」という単純な快楽原理や、生理的欲求の充足を重要視する動因低減説(第2章2節)への反証として位置づけられることになる。(抜粋)
人は元来、外界の刺激を求めて能動的に行動する存在である。コンピテンス概念を提唱したホワイトは「人が環境と相互作用しながら成長を指向するモチベーション」を「イフェクタンス動機づけ」と呼び「環境との効果的な関わり合いをもたらす快体験」を「効力感」と名づけた。つまりイフェクタンス動機づけとは効力感の充足をもたらすモチベーションである。
特に、留意するべきなのは、効力感が、ある目的(たとえば、知識は技能を身につける)が達成された際に生じるのではなく、環境との相互作用のプロセス(状態レベルの動機づけ)で生じるとされている点だろう。効力感はあくまでも現在進行形で体験される快感情なのである。(抜粋)
この「効力感」という語は、前に読んだ『無気力の心理学』のキーワードであった。無力感との対比で論じられていたよ。(つくジー)
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