『モチベーションの心理学 : 「やる気」と「意欲」のメカニズム』 鹿毛雅治 著
[Reading Journal 2nd:読書日誌]
第3章 達成と価値―目標説(その5)
4 目標プロセスアプローチ(前半)
第3章2節解説された目標説は「目標内容アプローチ」と「目標プロセスアプローチ」の二つのアプローチに分かれた。そして、第3節では、「目標内容アプローチ」が解説された。これを受けて第4節では、「目標プロセスアプローチ」について解説される。
(「目標内容アプローチ」と同じく「目標プロセスアプローチ」も、「前半」と「後半」に分ける)
まず「目標プロセス」とは、「目標が特定の行動を引き起こし、その行動が目標によってコントロールされていく過程や推移」を意味している。この目標実現のためのプロセスは、直線的には進まずに目標の修正をしたり、時には2つの目標の間で板挟みになったりする。そこで、「目標調整」が必要になる。
人が「〇〇しよう」と思う時、その思いを「意図」と呼ぶ。ここで、意図は、単なる予測や希望ではなく、その行動をしようというコミットメント(積極性)が含まれている。
意図とは、実行プランが行為者の決意として活性化した心理状態を意味しており、行為への身構え、すあわち、心理的スタンバイ状態なのである。実際、意図はモチベーションの重要な規定因であることがわかっている。意図はダイエット、禁煙、運動、勉強など広範な行為の実現をかなりの程度、予測するのである。(抜粋)
意図は、「目標意図」(=「Xするつもりだ」)と「実行意図」(=「Yという状況になったら、Zという反応をする」)分かれる。そして、目標意図よりも実行意図の方が効果的である。
(例、「目標意図」=「スポーツクラブへ行く」、「実行意図」=「10時のニュースが終わったら、車に乗ってスポーツクラブへ行こう」)
今日、様々な局面で目標を立てることの意義が強調され、それが求められることも多い。ただ、「目標倒れ」に終わってしまいがちなのは、望ましい結果を単に目標意図として書き出しているにすぎないからかもしれない。その意味で、実行意図という考え方はきわめて実用的で示唆に富む。(抜粋)
ここから「自己調整」の説明に移る。
「自己調整」とは、「目標の実現に向けて行われる調整や修正のような行動プロセス」である。目標には、行動を起こす働き(活性化機能)、適切な活動に向けて注意と努力を方向づけ、不適切な活動から遠ざける働き(方向付け昨日)、その実現に向けて努力を維持させる働き(維持機能)がある。
ここで重要な役割を果たしているのが、メタ認知である。(抜粋)
このメタ認知は、「自分を客観的に見つめる自分」のようなものであり、このシステムが自分を監視していて問題が発生すると解決に向けて行為をコントロールする。
われわれは、「フィードバック・ループ」と呼ばれる自己調整システムを持っているといわれている。
自己調整とはインプットと達成すべき目標とのズレを低減してそれをゼロにする(あるいはゼロに保つ)ためにアウトプット(行動)を変化させるはたらきであり、目標達成のプロセスはこの繰り返しなのだという。(抜粋)
この自己調整で大切なのはフィードバック情報、KR(knowledge of result:結果に関する知識)であり、このKRは該当行動やその効果に関する判断や、目標達成に向けての改善のヒントを含んでいて、自己調整の成否はこのKRが握っている。また、将来の予測情報に基づく調整は「フィードフォワード制御」と呼ばれる。
目標は階層構造を成しているが、この階層構造は固定的なものでなく自己調整により変化する。そのプロセスでは、高次の目標の実現のために下位の目標が選択され、プログラムレベル以下では、その行動が逐次モニターされて各水準の目標にフィードバックされる。
このように、目標階層で上位にあるレベルから下位にあるレベルに影響を及ぼす調整(トップダウン型コントロール)に対して、下位にあるレベルから自律的に機能するような調整(ボトムアップ型コントロール)もある。トップダウン型コントロールは意識的プロセスだが、ボトムアップ型コントロールは「今、ここ」での体験に密着している。
このボトムアップ型コントロールで、「感情」が決定的な役割をもつ。感情は情報処理プロセスにおいて「優先順位」を決める働きをする。また、感情は目標を達成するプロセスでも発生し、一般に上手くいっていれば「快」、うまくいっていなければ「不快」の感情が生ずる。ここで、「快楽原則」に従えば、ポジティブ感情がモチベーションを高め、ネガティブ感情がモチベーションを低下させるはずだが、必ずしもそうならない。不快感情が働くと、まずいと考えペースを上げ、反対に快感情によりペースを落としたりする(クルーズコントロール説)。感情とは一種の「シグナル」で、われわれはその情報を活用して柔軟に自己調整している。
やる気や意欲に関する「感情」は、3つの次元によって整理される。
- 1.「ポジティブかネガティブか」
- 2.「活動のプロセスで感知されるものか、それとも結果によるものか」
- 3.「活発な性質か否か」
この取り合わせにより、いろいろな感情が体験される。
また、なぜうまくいっているのか、うまくいかないのかという原因について振り返って考えること(原因帰属)を通して特別な感情が喚起される。このような感情により直後の自己調整、その後のモチベーションが左右される。
目標意図と実行意図というのは、なんだか覚えておくとよさそうですね。「実行意図」「実行意図」、・・・・・・・・・・・(つくジー)
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