『モチベーションの心理学 : 「やる気」と「意欲」のメカニズム』 鹿毛雅治 著
[Reading Journal 2nd:読書日誌]
第3章 達成と価値―目標説(その3)
3 目標内容アプローチ(前半)
前節(第2節)解説された目標説は「目標内容アプローチ」と「目標プロセスアプローチ」の二つのアプローチに分かれ。第3節では、「目標内容アプローチ」を解説し、第4節で「目標プロセスアプローチ」を解説する。
(「目標内容アプローチ」は長いため、「前半」と「後半」に分ける)
「目標内容アプローチ」の導入として、まずは「目標内容」、「エゴとタスク」についての解説がある。
目標内容の最も分かりやすいものに「パーソナル・ゴール」=「一人ひとりの個人が抱く個別具体的な目標」がある。そして、このプライベートな計画(パーソナル・プロジェクト)を書き出してもらい、さらに一つ一つの重要性、楽しさ、困難さ、ストレスの要素を判断してもらうことで、その人の個性が浮かび上がってくる。このパーソナル・ゴールは前節の目標の階層構造では、DOゴールに当たる。
重要なポイントは、それらの背景に「なぜそれをしようとするのか」という理由が潜んでいるという点だろう。…(中略)・・・・DOゴールの背後にはBEゴールの存在が想定できるのである。(抜粋)
モチベーションの研究では、目標を「エゴ(自尊)」と「タスク(課題)」に分けて考える。「エゴ(自尊)」とは、「社会的な評判やそれを通した自尊要求の充足を目的として努力する」ことであり、「タスク(課題)」とは、「卓越したパフォーマンスそれ自体を目指して努力する」ことである。
もちろんこの二者択一は単純すぎるが、エゴとタスクにあえて対比することでモチベーションの理解が深まる。
実際、エゴかタスクかという目標の違いが、モチベーションのプロセスと結果の両面に効果の差をもたらすことがわかっている。(抜粋)
ここより「達成目標理論」の話に移る。
この「エゴとタスクの違いに焦点を当ててモチベーションを解明することを目指すアプローチ」が「達成目標理論」である。
達成目標理論では、モチベーションを「パフォーマンス目標」と「マスタリー目標」に大別して説明する。パフォーマンス目標とは「自分の有能さを証明すること」を目指し、エゴ(自尊)に対応している。それに対してマスタリー目標は、「有能さを身につけることを」を目指し、タスク(課題)に対応する。
両者で努力の意味が異なるという点がポイントだ。マスタリー目標では、努力すること自体に価値がある。努力こそ能力の伸長を促すと信じているからだ。一方、パフォーマンス目標では、むしろ努力をしないことこそが望ましい。なぜなら、懸命に努力するよりもなるべく少ない努力で成功するほうが、自分が有能であることの証明になるからである。(抜粋)
さらにパフォーマンス目標は、接近=回避モデルの観点から、「パフォーマンス接近目標」と「パフォーマンス回避目標」に区別される。
少し考えればわかるように、課題の達成や能力の伸長のためには、マスタリー目標が望ましい。このことは多くの研究によって明らかにされてきた。(抜粋)
マスタリー目標では、課題そのものに注意が注がれ、熟達に関心が向いている。すなわち、課題関与が促さられる。
一方、パフォーマンス目標では、自我関与、すなわち自分自身に注意や関心が向けられる。自己価値(4章4節)に敏感になり、盛んに自己アピールしたり(パフォーマンス接近目標)、なるべく目立たないように心がけたり(パフォーマンス回避目標)する。
とりわけ、パフォーマンス回避目標がモチベーションやパフォーマンスにネガティブな影響を及ぼすことが分かっている。(抜粋)
このマスタリー目標を持ちやすい人とパフォーマンス目標を持ちやすい人といった個人差に「マインドセット」が関係している。
マインドセットは、「自分自身の能力や性格に関する信念」を指し、「能力(性格)は変化しない」と信じる「固定マインドセット」と「様々な要因によって能力は発達し、性格はよい方向に変化する」と信じるのが「成長マインドセット」である。
固定マインドセットを持っている人はパフォーマンス目標を、成長マインドセットを持っている人はマスタリー目標をそれぞれ持ちやすいという。(抜粋)
コメント