[読書日誌]『行動経済学の使い方』
大竹 文雄 著

Reading Journal 2nd

『行動経済学の使い方』大竹 文雄 著、岩波書店(岩波新書)、2019年
 [Reading Journal 2nd:読書日誌]

はじめに

読売新聞の書評(2024/7/28)にて、面白そうな本を見つけた!その名も『いますぐできる実践行動経済学』である。行動経済学って、なんか興味あるだけども、経済学に素養はない。デフレとインフレの違いがわかるくらいかな?なので、手を出しかねていたのですが、この本、書評によると「本書は、行動経済学の専門家が、中高生向けに講義するスタイルをとりながら経済学の基本的な考え方を紹介する」とある。これなら、読めそうかな?

そこでアマゾンで見てみると、「『あなたを変える行動経済学』に続く第2弾が登場。」とある。あれ?第2弾だったんですね。それだったらやっぱり第1弾から読まんとね。

と思って、またアマゾンで見てみると、この本は、早稲田塾でのオンライン連続講義がもとになっていて、そしてその講義の内容をまとめた本であるみたい。そしてそして、「事前に課題図書(拙著『行動経済学の使い方』岩波新書)を読んでもらう」とある。あらら、『行動経済学の使い方』が課題図書なんだ!じゃぁぁぁぁ~~、課題図書から読まんとね!

という経緯により『行動経済学の使い方』、『あなたを変える行動経済学』、『いますぐできる実践行動経済学』の3冊を読むことにしました。

では、まずは『行動経済学の使い方』から読み始めよう!


今日のところは、“はじめ”にである。まず著者は、

私たちの生活は起きてから寝るまで意思決定の連続である。(抜粋)

と言っている。そして、よりよい意思決定をするために、情報を多く集めるが、かえって選択できないようなことが起こる。正確な情報を豊富にあたえれば、必ず合理的な意思決定ができると考えられるが、実際には合理的な意思決定ができるとは限らない。

伝統的経済学では、ホモエコノッミカス合理的経済人)–利己的で高い計算能力をもってすべての情報を用いた合理的意思決定を行う人間—を仮定し、そのような人間像を前提に経済学を構築してきた。

しかし、1980年代から発展してきた行動経済学では、人間の意思決定には、伝統的な経済学で考えられている合理性から系統的にずれるバイアスが存在することが示されてきた。(抜粋)

行動経済学では、このような人間の意思決定のバイアスなどが研究対象になっている。その特徴として、

  1. プロスペクト理論:確実性効果と損失回避
  2. 現在バイアス:時間割引の特性
  3. 社会的選好:他人の効用や行動に影響
  4. ヒューリスティクス:系統的な直観的意思決定

がある。

著者は、人間の意思決定は合理的なものから予測可能な形でずれるため、行動経済学の知見を使って私たちの意思決定をより合理的なものに近づけることができるかもしれない、といっている。そして、行動経済学的特性を用いて人々の行動をよりよくするものをナッジという。

この本では、行動経済学の考え方をわかりやすく解説し、行動経済学を使ったナッジの作り方と、仕事、健康、公共政策における具体的な応用例を紹介する。(抜粋)

関連図書:
大竹 文雄(著)『あなたを変える行動経済学』、東京書籍、2022年
大竹 文雄(著)『いますぐできる実践行動経済学』、東京書籍、2024年


目次
はじめに [第1回]

第1章 行動経済学の基礎知識
 1 プロスペクト理論 [第2回]
  リスクのもとでの意思決定/確実性効果/損失回避/フレーミング効果/保有効果
 2 現在バイアス [第3回]
  先延ばし行動/コミットメント手段の利用
 3 互恵性と利他性
  社会的選好/互恵性
 4 ヒューリスティックス [第4回]
  近道による意思決定/サンクコストの誤謬/意思力/選択過剰負荷と情報過剰負荷/平柊への回帰/メンタル・アカウンティング/利用可能性ヒューリスティックと代表性ヒューリスティック/アンカリング効果/極端回避性/社会規範と同調効果/プロジェクション・バイアス

第2章 ナッジとは何か
 1 ナッジを作る [第5回]
  軽く肘でつつく/行動の特性を考える/行動変容を本人が望んでいるか/ナッジの選び方
 2 ナッジのチェックリスト [第6回]
  Nudges/EAST/MINDSPACE
 3 ナッジの実際例
  老後貯蓄の意思決定/自然災害時の予防的避難/ナッジは危険なのか?

第3章 仕事のなかの行動経済学
 1 三つの例から [第7回]
  バイトのシフトをどう入れるか/タクシー運転手の行動予測/行動経済学で解釈すると/プロゴルファーの損失回避
 2 ピア効果 [第8回]
  優秀な同僚が入ってきたら/スーパーマーケットのレジ打ち/競泳のタイム決勝

第4章 先延ばし行動 [第9回]
 1 賃金について考える
  参照点による効果/伝統的経済学による年功賃金の説明/行動経済学による年功賃金の説明
 2 バイアスに着目する
  失業期間を短くする/長期失業を防ぐナッジ/社会保障給付申請の現在バイアス/長時間労働と先延ばし行動

第5章 社会的選好を利用する[第10回]
 1 贈与交換
  贈与交換で生産性は上がるか/負の贈与の影響/贈与のイメージを意識させる
 2 昇進格差はなぜ生まれる?
  競争選好に男女差はあるか/マサイ族とカシ族での実験
 3 多数派の行動を強調する
  女性の取締役を増やすナッジ/無断キャンセルを減らすナッジ

第6章 本当に働き方を変えるためのナッジ [第11回]
 1 仕事への意欲を高める
  際限なく続く仕事/「シーシュポスの岩」の実験/意味のある仕事
 2 目標と行動のギャップを埋める
  達成できない目標/実行計画を書き出す/量ではなく時間で/合理的行動の落とし穴/習慣化できるルールを作る/次善の策がベストの策

第7章 医療・健康活動への応用
 1 デフォルトの利用 [第12回]
  ナッジで変える健康活動/大腸がん検診の受診率向上ナッジ/ワクチン接種率の向上ナッジ/オプト・イン/終末期医療の選択
 2 メッセージの影響を考慮する
  利得フレームと損失フレーム/治療法の説明
 3 成果の不確実性を考慮する [第13回]
  ダイエットのナッジ/ジェネリック薬品への切り替え
 4 臓器提供のナッジ
  イギリスでの実験/日本での実験

第8章 公共政策への応用
 1 消費税の問題 [第14回]
  重く見える消費税負担/同じ税負担でも消費行動が変わる/誤計算バイアス/軽減税率はなぜ好まれるのか/軽減税率は補助金と同じ/軽減税率の行動経済学
 2 保険料負担の問題
  一般の人の理解/伝統的経済学での理解/現実はどちらか
 3 保険制度の問題 [第15回前半]
  公的年金・公的健康保険の必要性/モラルハザード/法案提出と損失回避/少数派として意識させる
 4 O型の人はなぜ献血をするのか
  血液型性格判断/献血行動と血液型/血液型の特性に着目する

おわりに [第15回後半]
文献解題

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