比喩の工夫をする / 外来語の乱用を避ける
辰濃和男 『文章のみがき方』 より

Reading Journal 2nd

『文章のみがき方』 辰濃和男 著
 [Reading Journal 2nd:読書日誌]

III 推敲する 5 比喩の工夫をする

直喩。比喩の一つ。あるものを他のものに直接たとえる表現法。「雪のようなはだ」「動かざること山のごとし」など。
隠喩。比喩の一つ。「・・・・のようだ」「・・・・のごとし」などの形を用いず、そのものの特徴を直接他のもので表現する方法。「花のかんばせ」「金は力なり」の類。(大辞和)
活喩(擬人法)。修辞法の一つ。人でないものを人に見立てて表現する技法。「海は招く」の類。(広辞苑)

著者は、比喩を使うのはなかなか難しいと言っている。うまくいった場合は、文章が生き生きするが、下手をすると文章を壊してしまうからだ。

ここで著者は、比喩の使い方について須賀敦子に学びたいとして須賀の随筆『トリエステの坂道』から具体的な例をもって解説している。

須賀の比喩は、心細い状態のときは、それにふさわしい比喩を、心躍るときはそれに合った比喩を選んでいます。だからこそ比喩が生きている。心細い夜は自分の姿を「黒い小さな昆虫」にたとえ、心躍る朝は「白い花束」というはれやかな言葉を使う。黒とか白とかの色の表現が心の状態を表している。(抜粋)
須賀の使う比喩には独自性があり、ときに意外性があって、文章に新鮮さを与えています。借りものの言葉でなく、自分の感受性を信じているものの言葉がみごとに紡がれていいます。(抜粋)

このあと、同じように西加奈子の『さくら』を例に良い比喩について解説している。そして、比喩について次のようにまとめている。

  1. いい比喩は、文章にいきいきとしたツヤを与える。
  2. 比喩は、文章の流れ、文章の気分に沿ったものが望ましい。
  3. 逆に、下手な比喩を使うと、文章を壊してしまう恐れがある。
  4. だれかが使った比喩をそのまままねしてはいけない。とくにそれがすぐれた比喩であればあるほど、まねをしてはいけない。自分の言葉を使うことに意をそそぎたい。

関連図書:
須賀敦子(著)『トリエステの坂道』、みすず書房、1995年
西加奈子(著)『さくら』、小学館、2005年

III 推敲する 6 外来語の乱用を避ける

「だいたいNHKニュースというのがいけない。エヌ・エイチ・ケー(とカタカナで書くの)ではいかにも間のびしている。だからNHKと書くのだろうが、それならどうしても日本放送協会、略して日放協という名前でいけなかったのか。これもふしぎである。ともかく日本語のお手本のように言われてきた日本放送協会がNHKと名のった以上、これはもうどうしょうもない天下の大勢である。」(多田道太郎)(抜粋)

日本放送協会がNHKを名のり、旧国鉄がJR、農協がJAを名のる現状では、ローマ字の隆盛がとどまることをしらない。政府が作った「科学技術白書」や「厚生労働白書」を見てもカタカナ言葉が並んでいる。著者は、このような状態を大変憂いている。

新聞、テレビ、役所の文章は、日本の言葉で伝えられる場合は日本語を使い、外来語の使用は、どうしても日本語では表現できない場合に限ることにすべきだ、とわかりきっていることができないでいる。(抜粋)

しかし、時代の変化の激しさを考えると、カタカナ語を抑制することは、もはやかなり難しくなっている。しかし、それでも著者は次のように言ってこの章を閉じている。

新しい技術用語、経済用語の場合ではなくて、たとえば「店がオープンした」「組織のチェック機能が働いた」というときのカタカナ言葉は、使いたくない。こういった日常の言葉は、当たり前のことですが、十分に日本語で表現できるからです。(抜粋)

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