『文章のみがき方』 辰濃和男 著
[Reading Journal 2nd:読書日誌]
III 推敲する 3 紋切型を避ける
「ぼくはエキスポ70にさいして、中心の広場に『太陽の塔』を作った。およそ気どった近代主義ではないし、また日本調とよばれる伝統主義のパターンとも無縁である。逆にそれらを告発する気配を負って、高々とそびえ立たせた。孤独であると同時に、ある時点でのぎりぎりの絶対感を打ち出したつもりだ。・・・・・そのオリジナリティ(独創性)にこそ、一般を強烈にひきつける呪力があったのだ」(岡本太郎)
紋切型。①紋型を切って抜くための型。②決まりきった型式。③型どおりのやり方や見方。おさだまり。ステレオタイプ(型にはまっている事)(広辞苑)(抜粋)
著者は紋切型の事を書こうと思ったときに、大阪万博公園の「太陽の塔」の姿がありありと見えてきたと言っている。
群れることなく、一人ぼっちでいまだに立っているこの塔こそ紋切型というのに縁遠い作品はない。そして太郎は、「ものを作る」ことを人に勧め、
「手でつくるというのは、実は手先でなく、心で作るのだ。・・・・後略」(抜粋)
と言っている。そして、物を作るとき、器用である必要はなく、むしろ下手の方がよいとしている。
太郎の言葉の「作る」を「書く」に置き換えると、そのまま文章を「書く」という行為の極めて重要なことを言い当てている。
ものを書くうえで独自の世界をめざす、ということは「紋切型」と格闘しながら書くということでしょう。冒険を恐れずに書くことは、生活を豊かにすることでしょう。そういう大切なことの数々を太郎は教えてくれています。(抜粋)
この後、著者が注意したい紋切型についての解説がある。そして、「美辞麗句」も一種の紋切型であるとして、多くの例をあげた後、次のように注意をしている。
「長い間、ものを書くことを職とした体験から、確信をもっていえる。形容詞が多すぎる言葉は信用しないほうがいい」(抜粋)
関連図書:岡本太郎(著)『自分の中に毒を持て』、青春出版社、青春文庫、1993年
III 推敲する 4 いやな言葉を使わない
「なんでもかんでも『お』を被せるのは下品だ。特にカタカナの単語に『お』をつけるのは、ほとんどコントである。『お紅茶』は許せるけど、『おコーヒー』『おビール』などといわれると、それだけでその人の目をまっすぐ見られなくなってしまう」(甘糟りり子)(抜粋)
冒頭の言葉は、甘粕りり子の言葉である。りり子はさらに、「自分探し」、「自分みがき」「自分にご褒美」といった言葉も気になるとしている。またなんでも「プチ」を付けたりカタカナ用語の省略なども中途半端に古臭いとしている。
著者は、良い文章を書くには自分の中に「いやだと思う言葉」「居心地が悪くなる言葉」の数々を蓄え、それを「使うまい」と思うことが必要であると言っている。
関連図書:
甘糟りり子(著)『女はこうしてつくられる』、筑摩書房、2005年
中野重治(著)『日本語 実用の面』、筑摩書房、1976年
江國滋(著)『日本語八ツ当り』、新潮社、1989年
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