[再掲載]「義絶の人、関羽」(三国史演義)
井波 律子『中国の五大小説』(上)より

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(初出:2008-07-01)

「中国の五大小説」(上) 井波律子 著

『三国志演義』の巻 — 興亡の歴史と物語の誕生 九 義絶の人、関羽 — 華容道の会

赤壁の戦いで大敗北した曹操は敗軍を率いて落ちのびることになる。そこに敗走のルートを読み切った諸葛亮が各部将を次々に出発させて待ち伏せをさせる。しかし最初、諸葛亮はその中に関羽を外した。
関羽がなぜ私を外すのかという問いに対して諸葛亮は、関羽には曹操から受けた恩があるため、見逃してしまう恐れがあると答える。しかし関羽は恩ならばすでに返しているので心配することはないと言う。諸葛亮は関羽が曹操を見逃してしまう事などお見通しであるが、関羽に誓約書を書かせて華容道へ出発させた。そして「演義」きっての見せ場である「華容道の会」の場面となる。

諸葛亮に誓約書まで書いて出陣したにもかかわらず、関羽はやはり飢え疲れ、ボロボロになった曹操一行を見逃してしまいます。義の人関羽の潔くも根本的なやさしさが際立つ、素晴らしい見せ場です。曹操と関羽の絡む場面には、肉親にもまさる劉備との深い関係とはまったく異なった形で、人間同士、男同士の爽快な信頼関係が表現されています。その極点ともいうべきこの華容道の場面は、気迫のこもった筆致で力強く書きあげられており、魯迅ろじん王国維おうこくいも絶賛しています。(抜粋)

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