『成長を支援するということ』 リチャード・ボヤツィス 他 著
[Reading Journal 2nd:読書日誌]
8 コーチングや助けあいの文化を築く(前半)
今日から「8 コーチングや助けあいの文化を築く」である。ここでは、職場やさらに家族や友人とのあいだ、コミュニティーの中にコーチングや助けあいの文化を築くことがテーマである。このような枠組みの中に、互いが成長し、学び、新しいアイデアに対してオープンになる手助けができるような関係が広がると、絶え間なく変わる世界に対応するために役立ち、その気遣いは共鳴する関係を築くことになる。第8章は前半と後半の2回に分けてまとめるとする。前半ではまず、組織でのコーチングの導入とピアコーチングを取り扱う。それでは読み始めよう。
組織でのコーチング
組織にとってコーチングは新しい文化である。1960年代後半から1970年代前半に企業に導入され始めたが、定着したのは1990年代後半から2000年代前半にかけてである。
このような組織でのコーチングのカギは、人間関係である。また、組織の中で不利な状態におかれているグループ、たとえば新米のリーダー、マイノリティのグループ、女性、たちにとって、このようなコーチングはより効果があることがわかっている。
ここでは、コーチングを組織に導入する際の基本的な3つのアプローチ
- ペアまたはチームでのピアコーチング
- 内部コーチと外部コーチへのアクセス
- マネージャーや上級幹部が部下にコーチングを提供できるようするための幹部教育
が紹介される。
ピアコーチング
組織にコーチングの文化をつくりだすために使われるアプローチの1つに、ピアコーチングがある。(抜粋)
このピアコーチングは、ほぼ同じ地位にある2人以上の人が、個人および職業人としての成長を助けあうために集まり、有意義な出来事や特定の瞬間を振り返る、ものである。これは、相互支援のための個人的な支えをとなる結びつきを形にしたものである。
ピアコーチングでは、立場的に横並びの人々が話しあい、助けあうことに大きな価値がある。専門家や「上の人」などからの指導を受けるとなると「他者が規定した自分」を押し付けられNEAを呼び覚ましてしまう。
このような3人以上の集まりをピアコーチング・グループと呼ぶ。それは公式な形でも非公式な形でも可能で、組織的にはコストが低くそれでいて大きな効果が期待できる。
人間関係や感情的な結びつきを深めることが目的のピアコーチング・グループは新たなサポート集団として機能する。しかしわれわれは従来の問題の見極めと解決を意識するコーチングに慣れてしまっているため、注意しないとグループが「ダークサイト」に転じてネガティブな感情を引き起こすことがある。
このピアコーチング・グループは「社会的アイデンティティ・グループ」に形を変えて人間関係が継続するという効力がある。ピアコーチングの参加者が夢や将来について語りつづける友人となる。ここで大切なことはここでの人間関係は、共通の苦痛やつらい経験から生じたものでなく、PEAを呼び起こす活動によって、お互いの夢を深く理解した結果であることである。
ポジティブな感情の伝染と、共有された目的から生まれる「共鳴する関係」には永続性があるのだ。(抜粋)
このようなピアコーチングは1960年代~1970年代には「サポートグループ」や「Tグループ」と呼ばれた。そして1980年代には「クオリティー・サークル」などの従業員参加のグループ活動がトレンドとなる。1990年代になるとそれが、自主運営[セルフマネイジメント]や自己設計[セルフデザイニング]をうたう作業チームに形を変える。そして2000年代前半に組織内に学習チームやスタディグループを作る実験が始まる。
これらのすべてには、
- 非公式化か自発的に生じた横のつながりであること
- 生活、仕事、学びに関して助け合うことが目的であること
- メンバーがみずからテーマを決め、プロセスを管理すること
などの特徴がある。
このようなピアコーチングを推進するためには、
- 幹部だけでなく、もっと広い範囲の人々がコーチングにアクセスできるようにすること
- 継続するプロセスを大事にすること
などが大切である。
そして著者は、このピアコーチングについて次のように言っている。
ピアコーチングが最も強力に効果を発揮するのは、5~12人の小グループでPEAを呼び起こす活動をしたときである、というのが私たちの主張だ。本書でも説明してきたとおり、PEAを呼び起こす活動やグループ基準を用いることで、メンバーは心を開き、グループからも励ましを感じることができる。PEAを強化する方法に関しては、多少のトレーニングが必要であることを覚えておいてほしい。
自分でピアコーチング・グループを育てようと思ったら、少ない人数で始めることをお勧めする。(抜粋)
コメント