『作家の仕事部屋』 ジャン=ルイ・ド・ランビュール 編
[Reading Journal 2nd:読書日誌]
ジュリアン・グラック – 仕事は一日に二時間
ジュリアン・グラック(Julien Gracq)は、パリ士官学校で教鞭をとりながら小説を書いている。文学的流行や流派とは無縁で、孤独な創作活動をした。彼は《人間と世界の葛藤》から夢幻的な詩を引く出す作家である。
仕事の方法
自分がものを書くのは、あまりにも間欠的なので、仕事の方法などは持っていない。これまでも、一年あるいはそれ以上仕事をしていないことがあった。
書く時も、規則正しく仕事をするわけではない。ただ、夕食後は仕事をすることは避けている。物語や小説を書くときは、仕事をする日の間をあけないように努めている。そして、仕事をするといっても、実際は一日二時間以上仕事をすることはない。それ以上になると外に出て散歩せざるを得なくなる。
文章に細かく気を配らなければならない短いテクストを書いているときには、歩くことはしばしば、自分では必ずしも満足できなかった文章を機械的に練りあげるのに役立ちます。(抜粋)
物質的な要求としては、騒音のなかとか騒がしいところ、落ち着かないところでは書けない。つまり外では決して書かない。また人の往来があってもだめである。閉じられた静かな部屋、孤独。田舎で窓から遠くまで見渡せるようなところでないと書けません。
文章の書き方
文章は、始めから始めて終わりで終わるように書く。ひとつの文章を練っている間に次の文章の書き出しや断片を余白に書きつける。
エッセーとか小論、批評などの文章は、一度書きはじめれば、いずれ書き終わることがわかっているので、むしろ楽しいものである。これらは、ほとんど外部からの要請によって書いている。
しかし、物語や小説などは別である。これらにとりかかるのは、何カ月、時には何年も心の平静さと気軽さを失うからである。それにとりかかるのは、いつも多少の気おくれがある。書きはじめてから四、五ヶ月で書くのをやめて、その後やっと書き継げるようなことがしばしば起き、どうしても書き継げないこともあった。
小説を書くと、人はそれだけ貧しくなる。ですからーーーすくなくとも私にとってはーーー軽々に事をはじめてはならないのです。本当に書きたい気持ちがなければなりません。ところで、私は滅多にそういう気持ちにならないことが自分でもわかっているのです。(抜粋)
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