聞きだそうとしない / 秘密の話には羽がある
東山紘久 『プロカウンセラーの聞く技術』 より

Reading Journal 2nd

『プロカウンセラーの聞く技術』 東山紘久 著
 [Reading Journal 2nd:読書日誌]

29 聞きだそうとしない

聞き出そうとする態度

話し手から話を「聞き出そう」とする態度は、聞き手として大変問題な態度である。プロのカウンセラーであれば、カウンセラーであることを放棄したに等しい。

聞き出したくなる理由は

  1. 事実を確かめる必要があるという思いこみ
  2. 聞き手の興味

である。

事実を確かめる必要はない

聞き出したくなる理由の一つ目は「事実を確かめる必要があるという思いこみ」で、親や教師によくみられる行為である。刑事や検察官ならば事実を確かめる必要があるが、

人間関係を基本とした教育や薫育にかかわる人には、事実確認のために、相手から聞きだす行為は必要ではありません。極論すれば、事実がどうか確認する必要がないのです。(抜粋)

不法行為の事実を確認すれば問題行動を起こした子どもに罰をあたえることが出来るが、それで行動が矯正されるかどうかは疑問である。

親や教師は社会正義を教える人であり、そして社会的良心を形成する人なのです。良心は愛される体験から生まれます。(抜粋)

社会的良心(超自我)は、親の行為を見て育つ。愛する人を悲しませたくない、愛する人から拒否されたくないとい気持ちがベースとなっている。そうであるから「愛する人の言うことはよく聞く」のである。

子どものしつけは大切です。親が自分の都合からではなく、子どもを愛して子どもの立場に立っていることがしつけの基本です。(抜粋)

もちろん、知らないことを教えてあげる必要はある。しかしその場合も過去に起こったことではなく、目の前の子どもを見ていてやることが必要である。知らずに犯した行為を目にしたら、「そうしてはいけません。このようにするのよ」と教えてあげれば子どもは素直に行くことを聞いてくれるものである。

聞き手の興味

聞き出したくなる理由の二つ目は「聞き手の興味」から聞き手自身が効きたくなることである。聞き手は話し手の立場に立って興味を持つ必要があるが、話し手がいやがっていることに興味をもって聞き出そうとしてはいけない。プロのカウンセラーは、話し手がいいたくない話を聞き出そうとしたりせずに、話し手が話したいことだけをじっくりと聞く。そして、人間関係が培われていくと、この人ならばと言えなかった秘密を打ち明けてくれる。

秘密は話してしまうと風化します。いままで心のなかでもやもやと生存しつづけていたことが、風化し、自然に帰っていき、自分もふつうになれるのです。(抜粋)

話し手が話したくない話

前節「前置きの長い話」の時に、なかなか本題に入らない話の聞き方が述べられたが、話し手が話したくない話は、前置きが長いだけではなく「話が飛ぶ」「筋を微妙にずらす」「矛盾する話」などいろいろなケースがある。

話し手は、論理的に話すとは限らない。聞き手が論理的でないところを聞き出そうとすると話し手は話しづらくなる。「飛ぶ話」は話し手が飛ばすままに聞くことである。どんどん飛んでいても中には筋があるもので、何度も話し合いを重ねていくうちにわかってくる。「理屈が合わない話」も論理で攻めれば話すのをやめるだけなので、相手に合わせて話をさせてあげることが大切である。

それでも理屈に合わない話は、話し手が自分の気持ちを聞いてほしいだけなのです。(抜粋)

30 秘密の話には羽がある

秘密の話の重さ

聞き上手になる目的の一つは、関心を持っている人との人間関係を円滑にするためであるが、関係ある人との間でもっとも落差が大きいのは、秘密の話である。

この秘密の話は重く、秘密を抱えた当人から自分と直接関係のある話を聞くような機会は、一生に一度か二度くらいである。秘密は本人にとって重い事であり、秘密にしているだけの理由がある。

ここまで読んでこられた賢明な読者は、「そうか、マスコミをはじめ、他人は、みんな自己中心的見方で、秘密をもった人を見ている」ことに気づかなかったでしょうか。(抜粋)

秘密は内容も重要だが、言えないこと自体が重要である。内容をオープンにすると解決の方向が見えるが、反対に破壊の方向も見える。また、秘密にするような事柄は本人の変革を迫る。それはとても恐ろしい事である。

秘密は古代遺跡と同じ

精神分析の創始者であるフロイトは、抑圧していたもの(おさえて秘密にしていたもの)は古代遺跡と同じで、発掘されたときから風化する、と述べています。(抜粋)

抑圧していたものは風化させる必要があるが、急に風化させると破壊されてしまう。そのため秘密を聞いた人は、それを大事にして他人にもらしてはいけない

抑圧した秘密は、うまく聞かれると成長に結びつく。痛みは伴うが秘密を守ってくれる人に話すと、しだいに自分がどのようにすべきかがわかってくる。

聞き上手になるためには、人の秘密を抱えこんでおく容量が必要です。秘密は他人には軽いものですので、うっかりすると口の端にあげてしまう危険性がありますが、その点だけは心して戒めてほしいものです。秘密の話には羽があるのです。聞き上手になるためには、このことをよくよく知っておいてください。(抜粋)

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