落ち葉たちの円舞曲 / 葉っぱの旅、なんと深い感動が・・・・
柳田邦男 『人生の一冊の絵本』より

Reading Journal 2nd

『人生の一冊の絵本』 柳田邦男 著
 [Reading Journal 2nd:読書日誌]

落ち葉たちの円舞曲

日本の絵本では、春の桜、秋の紅葉を題材にした作品が多い。もちろん欧米の作品のなかにも、木や森を題材にした作品は少なくないが、紅葉についてみると、日本のように紅葉の美しさよりも、落ち葉を描いた絵本の方が多い。この章では、落ち葉を題材にした作品を四冊取り上げる。

『木の葉つかいはどこいった?』

一冊目は『木の葉つかいはどこいった?』である。この絵本では、美しい黄葉こうようの時期を過ぎた葉っぱたちが落葉らくようするタイミングを決めているのは、「木の葉つかい」という妖精であるとしている。

「木の葉つかい」は、黄葉した葉っぱたちに、枝からの離れ方や舞い落ちる仕方、〈ぴょーんと とんだり、こまみたいに まわったり、ひらひら とんだり、あがったり、さがったり、うずをまいたり〉など‐‐‐おしえる役目を担っている。(抜粋)

しかし、ある年この「木の葉つかい」が来なくて葉っぱたちが困ってしまった。

『さわさわもみじ』

二冊目は小型の絵本『さわさわもみじ』である。この絵本は、リズム感のある童謡詩のような言葉にカラフルなイラストで表現したものである。

『こねこのえんそく』

三冊目は『こねこのえんそく』である。三びきのこねこの兄弟が、秋の森にえんそくに出かける。そして、どんぐり拾い、松ぼっくり投げや落ち葉シャワーごっこなどをして楽しく遊ぶ話である。

『鹿踊りのはじまり』

そして四冊目は『鹿踊りのはじまり』である。この絵本は、宮沢賢治が故郷花巻周辺に伝わる芸能「鹿踊り」の起源を童話として書いたものに、絵を描いて絵本としたものである。

足に怪我をした嘉十かじゅうが、治療のため山の中の温泉にでかけた。途中、はんの木の下で栃の実団子を食べた。そして残した分を鹿にあげようと、はんの木の下に置いてまた歩き出した。しかし、うっかり手ぬぐいも忘れてきたことに気がつき、戻る。

すると六頭の鹿たちが手ぬぐいを見て、奇妙な生きものではないかと勘違いをして、手ぬぐいのまわりを踊りながら回っている。(抜粋)

感動した嘉十も我を忘れて踊り出し鹿たちの仲に入っていこうとした。すると、鹿たちは逃げてしまった。


関連図書:
ピーナ・イラーチェ(文)、マリア・モヤ(絵)、小川文(訳)『木の葉つかいはどこいった?』、きじとら出版、2015年
ひがしなおこ(作)、きうちたつろう(画)『さわさわもみじ』、くもん出版、2013年
竹下文子(文)、さこももみ(絵)『こねこのえんそく』、ハッピーオウル社、2016年
宮沢賢治(作)、たかしたかこ(絵)『鹿踊りのはじまり』、偕成社、1994年

葉っぱの旅、なんと深い感動が・・・・

木が好きな著者は、四季を通じてきと親しんできた。ある日著者が立ち寄った本屋で見かけたのが本章の二冊の本である。どちらとも黄葉したカエデの葉一枚が表紙に描かれている。

『かえでの葉っぱ』

一冊目は『かえでの葉っぱ』である。この本は、チェコの作家で画家でもあるデイジー・ムラースヴァーさんの童話を、チェコに住む絵本作家出久根育でくねいくさんが絵本化したものである。

崖の上に立つカエデの木から、黄色い大きな葉っぱが一枚離れ落ちる。葉っぱは〈うんと遠くまで行くんだ〉と胸を膨らませるが、すぐに大きな石の間に落ちてしまった。がっかりしていると、少年が拾ってくれて崖から強い風に乗せてくれた。

葉っぱは、旅をつづけていく。しだいに自分が黒ずんできたことに気づく。そして、最後に一面地面が凍りついた場所に落ち、やがて雪に埋もれた。そして春が来て雪が解けると葉っぱは灰色のクモの巣のような骨だけのような姿になってしまった。

また、秋が来て、空を飛んでいると、畑の一角にあの最初に出会った少年が焚き火をしているのに気づく。〈あ、あの子だ〉と、舞い降りる。
〈葉っぱはそっと熱い煙に近づくと、灰の上に落ち、くすぶり始め、赤い格子もようになりました。ふしぎなことに「これでいい」と思いました。〉(抜粋)

『もりのてぶくろ』

二冊目は『もりのてぶくろ』である。この本も黄色くなった一枚のカエデの葉が主人公になっている。

草むらに、一枚のカエデの葉が落ちている。ねずみが〈わあ、きれい〉といって小さな手をあててみるが、カエデの葉はねずみのからだよりも大きい。次にウサギがやってくる。うさぎのからだはカエデの葉より大きいが、やはり手はカエデの葉より小さい。次にクマが来る。クマはカエデの葉を鋭い爪のある大きな手で〈ばしん〉と踏みつけて行ってしまった。

静かになった原っぱに、幼い男の子がお母さんに連れらえて通りかかる。〈わぁ、いいものみつけた。てぶくろみたい〉と言うと、カエデの葉に手をあててみる。〈ぼくのてに ぴったりだ〉。(抜粋)

関連図書:
D.ムラース コヴァー(著)、関沢明子(訳)、出久根育(絵)『かえでの葉っぱ』、理論社、2012年
八百坂洋子(文)、ナターシャ・チャルーシナ(絵)『もりのてぶくろ』、福音館書店、2016年

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