『文章のみがき方』 辰濃和男 著
[Reading Journal 2nd:読書日誌]
II さあ、書こう 12 ゆとりをもつ
「笑われまいとつっぱって生きようとするその裏側には必ず自信のなさというものがあるんですよ」
「自信があって余裕を持たないと、笑いは生み出せないですね」(小沢昭一)(抜粋)
著者は、冒頭で小沢昭一の言葉を引用して、「ゆとり」と笑いは切っても切れない関係にあると言っている。それは、日本の落語やイギリスのユーモアに共通することで、どちらも、ある種のゆとりがありそれを笑いに持って行く。
著者は、この「ゆとり」と笑いの関係を、藤沢周平の『泣くな、けい』や、月刊『少年倶楽部』にあった読者投稿の「笑い話」コーナーを例にとり、具体的に解説している。
関連図書:
小沢昭一(著)『散りぎわの花』、文芸春秋(文春文庫)、2005年
小沢昭一(著)「ベスト・ドレッサー」『あたく史外伝』、新潮社(新潮文庫)、1984年
藤沢周平(著)「泣くな、けい」『夜の橋』、中央公論新社(中公文庫)、1984年
藤沢周平(著)「転機の作物」『小説の周辺』、文藝春秋(文春文庫)、1990年
杉山亮(選・解説)『のどかで懐かしい「少年倶楽部」の笑い声』、講談社、2004年
II さあ、書こう 13 抑える
「(俳句の世界では)『情』を作品の背後に隠す習練が要請されるのである」(復本一郎)(抜粋)
国文学者の復本一郎は、俳人・大須賀乙字の「俳句は、殊に情のねばりを嫌うべし」という言葉を受けて冒頭の言葉を書いている。この「情のねばりを嫌う」ということは、俳句だけでなく、文章修行にも当てはまる。
相手に、自分の思いをきちんと伝えたいのであれば、激しい感情の高ぶりを抑えることです。(抜粋)
著者は、ここで井伏鱒二の『黒い雨』を題材にして、具体的に解説をする。
井伏は、「文章を書くときに詠嘆的になりかけると、照れくさくて、別の気分で感じる場面にすりかえたくなる」といっています。
そして、そのような他の場面にすり替えることで酷い場面で「感傷は詠嘆を抑える」ことが出来る。
抑えることによって文章の力は失せるのではなく、かえって力が加わるのです。
(抜粋)
悲惨な場面のとき、あえて他の場面や事象などを差し込んで「すりかえ」ることによりかえって、その場面のリアリティーが増すといようかことだと思う。小説家のテクニックなんだと思った、キット。(つくジー)
関連図書:
復本一郎『俳句名言集』、朝日新聞社、1989年
井伏鱒二(著)「黒い雨」『井伏鱒二自選全集(六)』、新潮社、1986年(初出は1965年)
中野好夫(著)「わたしの文章修行」『ちくま日本文学全集・中野好夫』、筑摩書房、1993年(初出は1973年)
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