わかりやすく書く / 単純・簡潔に書く
辰濃和男 『文章のみがき方』 より

Reading Journal 2nd

『文章のみがき方』 辰濃和男 著
 [Reading Journal 2nd:読書日誌]

II さあ、書こう 8 わかりやすく書く

「文章というものは、むずかしいことを知っていても、やさしい言葉で相手にわかるように書かなければいけないんです」(瀬戸内寂静)(抜粋)

冒頭の引用は瀬戸内寂静の文である。寂静は、「平明」「平易」そして「達意」に書くことが大切であるといっている。著者は、そんなことは、当然みなさんも知っているでしょう、としながら、あえて「わかりやすく書く」ことの大切さを強調している。
また、評論家の中野好夫も、「わかってもらえなければ詮ない」と言って達意に書くことを強調している。

このことだけはどうしても相手にわかってもらいたい。その一途な思いがあるからこそ、文章に命が吹き込まれるのです。あなたの思い、あなたの考えを間違いなく伝えること、それは文章の基本中の基本です。(抜粋)

そして、著者は、わかりやすい文章を書くのに大切なのは、「これだけは何としてもあなたの胸に刻みたい」という切なる思いと言っている。

わかりやすい文章を書くことのヒントとして、著者は、映画評論家の佐藤忠男の例を引いて、「書き上げた文章を誰かに読んでもらう」ことを勧めている。

最後に著者は「わかりやすい文章」を書くためポイントを以下のようにまとめている。

  1. 自分がどうしても伝えたいこと、自分の思い、自分の考えをはっきりさせること。
  2. そのことを単純な文章で書いてみる。難し言葉を使わない。
  3. 書いたものをだれかに読んでもらい、感想を聞かせてもらう。
  4. そのうちに、自分が自分の文章の読み手になり、自分の文章がわかりやすいかどかを評価することができるようになる。
  5. 何回も書き直し、さらに書き直す。

関連図書:
水上勉・瀬戸内寂静(著)『文章修行』、岩波書店、1997年
中野好夫(著)「わたしの文章修行」『ちくま日本文学全集・中野好夫』、筑摩書房、1993年
浅田次郎(著)『ひとは情熱がなければ生きていけない』、海竜社、2004年
佐藤忠男(著)『論文をどう書くか』、講談社(講談社現代新書)、1980年

II さあ、書こう 9 単純・簡潔に書く

「私は単純に書きたいと思っている。なるべく短い文章で書きたい」(中野重治)(抜粋)

著者は、単純・簡潔に書くことを、登山でもたとえを用いて説明した後、

複雑な要素のなかから一番大切な要素を選んでまず知らせる。相手にとって、どういう言い方がいちばん適切かを考える。それが「単純化」の一つの条件です。(抜粋)

と言っている。
そして、ある新聞社に載っていた「日本一短い手紙」の話を例にとり、単純で簡潔な文章を書くときには、読む人に「いちばん何を伝えたいか」を明確することであるとしている。

さらに、中野重治は、冒頭の文章の後に、やたらと形容詞を並べたような文章や毒々しい言葉の羅列をしたくないと言っている、としている。そして、そのようにならないためには、「こだわりを捨てる」ことが大事だと言っている。

「これだけは書きたい、伝えたい」というものを核にし、あとは思い切って捨てる。誇示、美化、ほら、自慢、歪曲、針小棒大など、そういうものを捨ててしまうことです。(抜粋)

ここで著者は、このような単純で簡潔な言葉が持つ力を注意する必要があるとしている。戦中では、「鬼畜米英」「滅私奉公」などの単純化された標語や戒めがあり、そのような言葉はかなりの影響力を持っていた。そのため、単純化が人々を間違った方向に導くものになってはならないと、言っている。

最後にこの章のまとめを以下のように書いている。

  1. 単純に書くにはさまざまな言葉の群れのなかから、いちばん大切な言葉を選ぶという習練が大切です。なにを選び、なにを捨てるかという習練です。
  2. そのためには、もやもやしたものから「いちばん何を伝えたいか」を選ぶという作業が必要になります。
  3. 「日本一短い手紙」などを書くことで、単純な文章を学ぶことができます。
  4. 単純な言葉のもつ危険性についても、十分に知っておく必要があります。

関連図書:
中野重治(著)『日本語 実用の面』、筑摩書房、1976年
ベルハント・シュリンク(著)『朗読者』、新潮社、2000年

コメント

タイトルとURLをコピーしました