異質なものを結びつける / 自慢話は書かない
辰濃和男 『文章のみがき方』 より

Reading Journal 2nd

『文章のみがき方』 辰濃和男 著
 [Reading Journal 2nd:読書日誌]

II さあ、書こう 6 異質なものを結びつける

「『嫁さんになれよ』だなんてカンチューハイ二本で言ってしまっていいの」
「梅雨晴れのちり紙交換 思い出もポケットティッシュに換えてくれんか」(俵 万智)(抜粋)

著者は、冒頭に俵万智の『サラダ記念日』からの引用を載せている。そして、これらの歌は、異質なものをむすびつける面白さを教えてくれるといっている。

さらに、著者は散文の世界でも、異質のものを結びつけることで新しい次元に飛ぶことができるとしている。つまり、Aのことだけを書くのでは話が単調となるので、そこで異質のXを持ってくる。そのA-Xの結びつきがうまくいくと、新しい効果が生れる。
そして、その成功例として朝日新聞の文化欄にあった田村おさむ(憲法学者)の評論「キムタクの『目』と憲法」をあげ、具体的に説明している。

強調しておきたいのは、自分の思いをどうすれば人びとにわかってもらえるか、そのことを軽くみてはいけないということです。そのため一つの手段として異質なものをどうやって結びつけるかといいことに心を砕く。つまり、A-X合体の術を身につける、ということです。(抜粋)

関連図書:
俵万智(著)『サラダ記念日』、河出書房新社、1987年
中村俊定(校注)『芭蕉俳句集』、岩波書店(岩波文庫)、1970年

II さあ、書こう 7 自慢話は書かない

「気のきいた文章を書くてっとり早いけつは『自分がピエロになる。自分の欠点を情容赦なく書く』である。逆に読み手の強い反感を買うのは『自分の欠点を書いたようでいて、実は自慢話になっている』である。」(姫野カオルコ)(抜粋)

著者は冒頭で姫野カオルコの文章を引用し、さらに姫野はつづけて、

「一枚上手の文章技法は『自慢話をしていたようでいて、実はピエロになっている』となる」(抜粋)

と、さらに引用する。ここで問題点を

  • A. 自分の欠点、ダメなところを書いたようでいて、実は自慢話になっている。
  • B. 自分がピエロになって、自分の欠点を容赦なく書く
  • C. 自慢話をしたようでいて、実はピエロになっている

とまとめる。
ここで、Aは、反感を買いやすい。Bは、映画の「寅さん」や「釣りバカ」のように、ばかにされながら人気者になる。そして、問題は、姫野が「さらに一枚上手の文章技法である」とるCであるといっている。

ここで、著者は姫野の『初体験物語』や『ガラスの仮面の告白』などを例にしてとして、具体的にCを解説している。

自慢話のよりも、失敗談を。私たちの多くは、海に身を投げた平知盛や北海道で戦死した新選組の土方にひかれ、チャップリンの失恋話や、落語の熊さんのおっちょこちょいに親しみを感ずる習性があるようです。
良寛さんも、戒めの言葉として、まっさきに「手がら話」をあげています。御要心。(抜粋)

関連図書:
姫野カオルコ(著)『初体験物語』、角川書店(角川文庫)、1998年
北川悦吏子(著)『恋のあっちょんぶりけ』、角川書店(角川文庫)、2002年
姫野カオルコ(著)『ガラスの仮面の告白』、角川書店(角川文庫)、1992年
姫野カオルコ(著)『ちがうもん』、文藝春秋(文春文庫)、2004年

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