目標とモチベーション
鹿毛雅治『モチベーションの心理学』より

Reading Journal 2nd

『モチベーションの心理学 : 「やる気」と「意欲」のメカニズム』 鹿毛雅治 著 
[Reading Journal 2nd:読書日誌]

第3章 達成と価値―目標説(その2)
   2 目標とモチベーション

1節では、「価値」について概説された。これを受けて第2節より「目標説」の解説が書かれている。そしてこの目標説は「目標内容アプローチ」と「目標プロセスアプローチ」の二つのアプローチに分かれとし、第3節、第4節で解説される。
今日のところは、「目標説」についてである。


古くから心理学では、モチベーションを目標の問題として扱われてきた。
ここで、「目標」の定義は、「人が成し遂げよう努力する最終段階について、心の中に主観的に思い浮かべる具体的イメージ(認知的表象)」である。
そして、目標という用語でモチベーションを説明する考え方を「目標説」という。

目標にはその人らしさが現れる。その目標の違いは「価値」の違いでもある。目標の背後には、より上位の目標や価値が存在し、そのアプローチも人によって異なる。さらにこの目標は、「目的」を上位、「手段」を下位とした階層構造を成している。

このような目標システムの全体像はまさに「その人らしさ」の反映であり、パーソナリティの少なくとも一部がそこにあらわれている。(抜粋)

目標の階層構造は、上位から

  • 1.システム概念(Beゴール)・・・抽象的な目標(理想自己)
  • 2.原則(Beゴール)・・・社会的承認など
  • 3.プログラム(Doゴール)・・・具体的な目標
  • 4.連鎖(動作制御ゴール)・・・具体的な動作を制御するための目標

の4つの水準の目標があり、そして、各水準間は、「目的」-「手段」の関係になっている。また、これらの目標は、抽象度の高い順にBeゴール、Doゴール、動作制御ゴールと大雑把に分類することもできる。

同じ目標でも、このような目標の階層構造は人によって全く異なり、これを分析することによりパーソナリティやモチベーションの違いといった個人差が理解できる。

ここより、目標設定理論の話に移る。
「目標設定理論」は、目標とパフォーマンスに焦点を当てて発達してきた考え方である。この理論によれば、「より困難で、より具体的な目標がモチベーションを高め、ひいてはパフォーマンスを向上させる」という。そして、達成要求の高い人は成功する可能性が50%と感じる時に最もやる気になるとしている。また、具体性については、

目標は具体的なほうが当人の注意がそこに焦点化し、何をするべきはという見通しが明瞭になるため、実行の確実性が増すのである。(抜粋)

としている。

目標設定理論では、パフォーマンスは、「目標の性質(具体性、困難度など)」が「認知的メカニズム(努力、方略など)」と媒介変数(重要性の認知、自己効力など)の影響を受けて、規定されている。そしてその結果として体験された「満足感」は、その後のモチベーションに好影響を及ぼし、循環プロセスを成す。

この理論では、とりわけ「目標コミットメント(積極的関与)」、「フィードバック」「課題の複雑さ」の3つの媒介変数が、重要な変数とされている。

目標コミットメントを促進する要因が、目標の価値と自己効力(「それができる」という自信:第4章3節)だという。このことから、いくらその目標に価値があるからといって、やみくもに困難な目標にすることは逆効果であることもわかる。実行可能性に疑いが生じ、自己効力が低下するからである。(抜粋)

また、「フィードバック」も重要である(3章4節参照)。もしフィードバックが無ければ目標達成に必要な方略を修正できなくなってしまうからである。

課題の複雑さに関しては、一般に複雑な課題ほど高いレベルのスキルや方略が必要であるため、適切な解決策を発見したり、実行したりする能力が当人にあるか否かに左右される。

目標設定理論は、目標が行動へと結びついていくモチベーションのアウトラインを描いていてわかりやすい。その図式には、どのような目標なのかという内容面と、目標がどのように行動に結びつき、その結果、次の行動がどうなるのかというプロセス面が統合的に示されているといえるだろう。(抜粋)

目標設定理論は、内容面に力点を置く「目標内容アプローチ」(第3節)とプロセスに力点を置く「目標プロセスアプローチ」(第4節)に大別できる。

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