「効力感を伸ばす学校教育」
波多野誼余夫 / 稲垣佳世子『無気力の心理学 改版』より

Reading Journal 2nd

『無気力の心理学 改版 : やりがいの条件』 波多野誼余夫/稲垣佳世子 著 
[Reading Journal 2nd:読書日誌]

第8章 効力感を伸ばす学校教育

第7章では、効力感を伸ばすための「家庭教育」について書かれていた。そして第8章では、家庭教育と同様に重要な「学校での教育」について書かれている。


学校も家庭と同様に子どもにとって生活の場という意味がある。ここで子どもの効力感を伸ばすためにおとなが配慮すべきことは、基本的には前章、家庭教育で述べたところと同じである。

学校では、子どもを優劣で評価を下すことがつきものであるが、これは子どもが主体的に学習に取り組む妨げになる側面がある(第4章参照)。
教師が評価をする場合には、相対的評価ではなく、自分がどこまで達成したかを到達度評価が好ましい。その時に行動のどこが良くどこが悪かったかについて情報を与えることが大切である。さらに効力感を育てる観点から好ましいのは、自分の努力の結果であると思える評価である。

次に著者は、

効力感を育てるには、自分の熟達が自分で実感できる課題と取り組む経験が必要である。(抜粋)

として、いくつかの例をしめしている。その例に共通するのは、時間的制約が弱く、マイ・ペースで取り組めることがあるとしている。

知識の伝達を効率化すること自体はよいとしても、それが最大の目標になってしまうと、問題を解くおもしろさも、自分の能力について正確なメタ認知も、また効力感も、発達しにくいと考えるべきであろう。(抜粋)

次に話題を変えて、仲間との教えあいの話に移る。効力感を得るためには「仲間との温かいやり取り」が重要である(第5章参照)。これを踏まえ、教育の現場で友達同士教えあう機会を多く持たせることが重要としている。

第5章でもみたように、このような教えあいの経験は、とくに教える側の子どもの効力感の形成に寄与することが多い。(抜粋)

このような教えあいの他に、「集団間の競争」も効力感の形成に利用できる。個人的な競争は、効力感の形成を妨げる傾向があるが、集団間の競争では勝ち負けに拘泥しないことが多く、子どもたち同士での教え合いが活発になるため効力感の形成に有効と考えられる。ここで著者は、集団間での競争を教育的手段として利用するのは危険が伴うと注意をしている。

その後、板倉聖宜の「仮説実験授業」やオープンスクールの話が説明される。


関連図書:板倉聖宜(著)『仮説実験授業』、仮説社、1974年

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