「自己発生的態度変容」
坂本真士『ネガティブ・マインド』より

Reading Journal 2nd

『ネガティブ・マインド : なぜ「うつ」になる、どう予防する』 坂本真士 著
 [Reading Journal 2nd:読書日誌]

第3章 ネガティブ・マインドの仕組み―自己没入の中で起こること
3.4 自己発生的態度変容

本節では、認知が認知・感情・行動の傾向を強めてしまう仕組みとして「自己発生的態度変容」について解説する。


「自己発生的態度変容」とは、「好きな人(事)について考えると、ますますその人(事)が好きになる心理」である。
ここで、著者は心理学用語としての「態度」を次のように説明している。

態度とは、人がある対象に対してとる行動を説明、予測するための仮説的構成概念であり、これには感情、認知、および行動への準備傾向の三つの要素が含まれるとされている(抜粋)

つまり、一般にいう態度とは、違う概念である。

わたしたちには、「態度の一貫性」を保つような認知機能が備わっていて、たとえば自分がポジティブな態度を持つ対象(好きな人とか物など)に対しては、ポジティブな認知が行われ、ますますポジティブな態度が強まる。このようにして「自己発生的態度変容」という現象が起こる。

ここで、著者はこの「自己発生的態度変容」は、いつも適応的に働くとは限らないとして、次のように注意している。

うまくやっていく必要がある相手の場合、イヤな奴だからといって、その人の欠点ばかり注目しても始まらない。悪循環に陥るばかりである。欠点ばかりを見つけようとするのではなく、美点は美点として正当に評価したい。(抜粋)

そして、この「自己発生的態度変容」は、自分に対しても起こる。自分に対してネガティブな態度を持つ人は、自分の美点に気付かず欠点ばかりに目が行く。そしてますます自分に対してネガティブになってしまう。

ここで著者は、理想と比較して自分に足りないものを考える「引き算思考」ではなく、自分に一定のポジティブな評価をした上で、自分に何が足りないのかを考える「たし算思考」をすることが大切であるとしている。

ここで、このような心理の理解をより深めるために、著名な社会心理学者フェスティンガーが提唱した「認知的不協和」の話に移る。

フェスティンガーは、自己や周囲の環境に関する知識を認知要素とし、それらの間に生ずる矛盾を不協和と呼んだ。そして、不協和の状態は、私たちに不快な緊張状態を生じさせると言う。(抜粋)

この認知的不協和を低減できれば、不快な気分薄れるため、「行動の変化」、「認知の変化」、「認知の付加」、「情報の回避」などを行って不協和を低減しようとする。

このようなメカニズムが「自己確証」や「自己発生的態度変容」でも関係していると考えられる。

自己確証や自己発生的態度変容という現象が起こる背景として、人は自分や周囲の認知を、矛盾のないようにしておきたいという動機があると思われる。(抜粋)

最後に、認知不協和理論から考えると、ネガティブな自己を変えるには、ネガティブな自己概念に矛盾する事実に接することが必要になると言って、具体的な手続きは次章に4.4節で紹介するとして節を閉じている。

コメント

タイトルとURLをコピーしました