『ネガティブ・マインド : なぜ「うつ」になる、どう予防する』 坂本真士 著
[Reading Journal 2nd:読書日誌]
第2章 自己注目 — 2.2 自己注目とうつ
前節の「自己注目」を受けて、本節では、「自己注目」と「うつ」の関連について解説している。S-O-Rモデルを使い、このモデルでの“O”が「自己注目」であると仮定し、うつと自己注目を①始動 ②作動 ③持続 の過程に整理する。
自己注目は、行動の調整をする機能をもつが、ネガティブな気分を増大させる危険性もある(前節参照)。
ここで著者は、自己注目とうつの関連性に話を進める。
まず自己注目では、
①.「行動の基準が意識される」場合 → 基準を満たさない場合が多い → ネガティブな気分を経験、自尊感情が低くなる
②.「行動の基準が意識されない」場合 → 自己に関する情報が意識されやすくなる → 様々な出来事の原因が自分と考える、自分のことを話題にしやすくなる、その場の感情が強まるような、反応が現れる。同じような現象がうつにも見られ、うつでは
①.自己の基準を高く設定、ネガティブな感情を経験、自尊感情が低くなる
②.ネガティブな出来事を自分が原因と考えやすい、自分のことを話過ぎる
のように自己注目に似た現象があらわれる。
このように見てみると、自己注目とうつとの間に何か関係があるようである。(抜粋)
そこで、心理学で使われる、S [刺激 (stimulus)] – O [生活体 (organism)]–R [反応 response] モデルをこの二つに当てはめると、
自己注目:S [誘導刺激] → O [自覚状態] → R [反応(感情・行動・認知)]
うつ :S [ネガティブな出来事] → O [? (自己注目と仮定)] → R [うつ症状]
となる。
ここで、Oの部分は心理学の創成期では、探ることができないものとしていたが、後にこの部分こそ研究する意義があると考えられるようになった。Oの部分を現代心理学では、「認知」と呼ぶ。
このように比較すると、うつのOにあたる部分は、「自己注目」ではないかと考えられる。しかし、自己注目が必ずうつにつながるのではなく、うつにつながる自己注目とうつにつながらない自己注目がある。
そこで、自己注目とうつとの関連を考える、新たなモデルが必要になる。(抜粋)
そして、ここ新たなモデルとして「始発-作動-持続」モデルが登場する。
このモデルでは、自己注目とうつの関係を①始発、②作動、③持続の三段階に整理し、次にようにうつの経過と対応付ける。
①.自己注目の始発 = うつが生じるきっかけ
「何らかの出来事や刺激によって注意が自己に向かう段階」は、「うつが生じるきっかけ」と対応できる。ここで、どのような状況が自己に注意を向けさせ、さらにうつにつながるかは、2.3節で述べられる。
②.自己注目の作動 = うつの発生
「貯えられていた自己に関する情報(記憶、信念など)が意識されること」は、「ネガティブな場合、うつ的」になる。ここで、どのような情報がうつのもとになるかは、2.4節で扱う。
③.自己注目の持続 = うつ増悪
うつは、長引き増悪すると問題になる。落ち込んだままの自己注目を続けると、うつからの回復が遅れる。ここで、なぜうつ的な気分の時に自己注目を続けると、うつの増悪になるかについては、第三章で検討する。
この後、具体的な例を持って「始発-作動-持続」モデルの開設が続く。そして最後に、うつを発生させる心の働き(ネガティブ・マインド)をコントロールするやり方を、第四章で説明するとして節を終えている。
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