『ネガティブ・マインド : なぜ「うつ」になる、どう予防する』 坂本真士 著
[Reading Journal 2nd:読書日誌]
第1章 ネガティブ・マインドとは1.2 うつ症状とうつ病1.3 うつの疫学
1.2節では、「うつ」の症状、1.3節では「うつ」の疫学について解説している。
まず1.2節では、うつ病の疑いのある人を見つけるために使用するCEA-Dという質問票が示される。この質問票により、自ら「うつ」の疑いが高いかを確認できる。(この質問票では、16点がカットオフ・ポイント(分割点)としていて、それ以上だと「医師の診断が勧められる」)
次に「うつ」の症状であるが、感情の症状の他にも、動機づけ、認知・行動、身体と多岐にわたる。
〇感情の症状
※「悲しい」「落ち込んだ」「むなしい」「何となくやる気がしない」等
※喜びの喪失
※イライラ感
〇認知・行動の症状
※ネガティブに考える、絶望的に考える
※↑が行動に現れる
※「罪業妄想」、「貧困妄想」「心気妄想」(重大な病気と思いこむこと)
〇身体的症状
※体重の大幅な増減
※過眠・不眠
※疲れやすい
※自律神経系の症状(めまい、息切れ、微熱、便秘、冷や汗、寝汗等)
「うつ」の症状が多ければうつ病の可能性が高いが、気をつけないといけないのは、うつ病以外でもうつ症状が出る病気があること、また、うつ病の診断には一定期間の症状の持続が必要である。
実際に「うつ病」とは何かについては、本書の範囲を超えるとして割愛されている。(興味がある人にはとして、野村総一郎の『うつ病の真実』日本評論社を勧めている)
次に1.3節では、「うつ」の疫学について各種のデータから解説している。
まず、有病率:「どのくらいの人がうつと判断されるか」については、世界各地での疫学調査の結果から、
大雑把に言うと、二〇人に一人程度(五%)が、最近半年間にうつ病と判断される状態になったことがあり、一〇人に一人程度(一〇%)が一生に一度以上うつ病と判断される状態を経験したことになる。(抜粋)
としている。ここで、「うつ病患者」ではなく「うつと判断される人」となっているのは、うつ病状態の人が必ず診察機関を訪れることはなく、むしろ少数派であるので、患者数を数えるだけでは、十分でないからである。
男女別では、女性の方が有病率が高く、また、年代別では青年期(二〇歳~三四歳)と中高年期(四五歳~五四歳)で有病率が高くなっている。
最後に次章では、うつの仕組みを「社会的認知」特に「自己への注目(自己注目)」から解説すると予告をして結んでいる。
関連図書:野村総一郎(著)『うつ病の真実』、日本評論社、2008年
後記 [2023-01-02]
いま、福間詳の『ストレスの話』を読んでいるのだが、ここでは、「ストレス障害によるうつ状態」と「うつ病によるうつ状態」は似ているが、この両者は切り離して考える方がよい」としている。その「発現のしかた」「病状の経過」「予後」「治療のあり方」に違いがあるからである(ココ参照)。
そして、この章(本)では、主に「ストレス障害によるうつ状態」を含めたものをうつ病としているのだと思う。ただ、実際にはこのストレス障害によるうつ状態の方が圧倒的に多いようであり、また、本書の趣旨、ネガティブマインドの仕組みを理解しそれを予防してうつ状態にならないようにする、ではそれでよいのだと思う。ただ、ストレスと関係ない疾病である(内因性)うつ病というものもあるということは押さえておいた方が良いと思った。(つくジー)
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