『戦艦大和ノ最期』吉田満 著
[Reading Journal 1st:再掲載]
(初出:2005-08-11)
出撃前夜、出撃ノ朝、作戦発動
今日は、出撃前夜から作戦発動まで。
出撃前夜、全艦無礼講の大宴会がもよおされ、いよいよ出撃である。出撃の朝、全員が遺書をしたためている。
今回の出撃は、そもそも、華々しく沈むのが目的であった。(そのため、燃料は往路分しか積んでいない。)
本作戦ハ、沖縄ノ米上陸地点ニ対スル ワガ特攻攻撃ト不離一体ニシテ、更ニ陸軍ノ地上反攻トモ呼応シ、航空総攻撃ヲ企図スル 「菊水作戦」ノ一環ヲナス
・・・・・前略・・・・・米戦闘機ノ猛反撃ハ必至ナレバ、特攻攻撃挫折ノ公算極メテ大ナリ
シアカラバソノ間、米迎撃機群ヲ吸収シ、防備ヲ手薄トスル囮(オトリ)ノ活用コソ良策トナル・・・・中略・・・・・
「大和」コソカカル諸条件ニ最適ノ囮ト目サレ、ソノ寿命ノ延命ヲハカッテ、護衛艦九隻ヲエラビタルナリ
・・・・中略・・・・
ソノ使命ハ一箇ノ囮ニ過ギズ 僅カニ片路一杯ノ重油ヲ縋ル(抜粋)
このような、誰の目にも無謀な作戦は、兵士の命に責任を持つ各艦艦長の頑固な抵抗にあった。そのため中央司令部は、特使を大和に派遣した。
伊藤長官ガ疑念ハ、美辞麗句ノ命令ニ背後ニアル 「真ノ作戦目的」ハ何カニ集中シ、 「一億玉砕ニ先ガケテ立派ニ死ンデモライタシ」トノ最後的通告ヲ得テ、ヨウヤク納得サレタリ(抜粋)
このような必敗の作戦は艦内の士官の間でも、議論になり、兵学校出身者と学徒出身者が対立する。
兵学校出身ノ中尉、少尉、口ヲ揃エテ言ウ 「国ノタメ、君ノタメニ死ヌ ソレデイイジャナイカ ソレ以上ニ何ガ必要ナノダ モッテ瞑スベキジャナイカ」
学徒出身士官、色ヲナシテ反問ス 「君国ノタメニ散ル ソレハ分ル ダガ一体ソレハ、ドウイウコトトツナガッテイルノダ 俺ノ死、俺ノ生命、マタ日本全体 ノ敗北、ソレヲ更ニ一般的ナ、普遍的ナ、何カ価値トイウヨウナモノニ結ビ附ケタイノダ コレラ一切ノコノハ、一体何ノタメニアルノダ」(抜粋)
このような議論は、乱闘の修羅場となる。そして この議論を制したのは、 哨戒長白淵大尉の結論だった。
「進歩ノナイ者ハ決シテ勝タナイ 負ケテ目ザメルコトガ最上ノ道ダ
日本ハ進歩トイウコトヲ軽ンジ過ギタ 私的ナ潔癖ヤ徳義ニコダワッテ、本当ノ進歩ヲ忘レテイタ 敗レテ目覚メズシテイツ救ワレルカ 俺タチハソノ先導ニナルノダ 日本ノ新制ニサキガケテ散ル マサニ本望ジャナイカ」(抜粋)
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