『日本仏教再入門』 末木 文美士 編著
[Reading Journal 2nd:読書日誌]
第十章 社会活動する仏教 近代の仏教4(大谷栄一) (その2)
今日のところは、「第十章 社会活動する仏教」の“その2”である。“その1”では、仏教の社会活動が「社会的サービス」と「政治的行動主義」の二つのパターンに分かれること、さらに明治期の仏教慈善事業の展開が扱われた。
そして今日のところ“その2”では、大正時代の「仏教感化救済事業」の様子や「政治的行動主義」として「参政権運動」を取り扱われる。それでは読み始めよう。
2.大正期における仏教社会事業と参政権運動
大正期の仏教感化事業
大正期の仏教徒の社会活動は、「社会的サービス」型の活動が中心となる。日露戦争後の好景気はすぐに終わり、不況が続いた。都市でも農村でも国民の不満が増し国家の構造的危機が深刻化する。
このような情勢で、政府が行った対策の一つが「感化救済事業講習会」であった。そしてこの講習会に出席した僧侶が中心となり「仏教同志会」が結成された。これは超党派の団体で各宗派からの財政的な援助がなく、実質的には機能せずに終わった。しかし、その計画には先駆性があった。
そして、この時期に多くの宗派によって慈善事業、感化救済事業に取り組む団体が結成された。その中で最も活発に社会活動に取り組んだのが、浄土宗である。その中心に渡辺海旭(ココ参照)椎尾弁匡、矢吹慶輝、長谷川良信、秦隆真ら「浄土宗社会派」と呼ばれる人々がいた。
仏教社会事業の始まり
「仏教社会事業」という言葉を創唱したのは、渡辺海旭である(ココ参照)。ここで著者は、海旭の軌跡を追っている。
若いころから浄土宗の中枢で活躍していた海旭は、海外留学生としてドイツに渡る。そして帰国後は宗教大学で教鞭を務めるが、ヨーロッパで見聞きした社会運動や社会事業の経験をもとに、社会事業に乗り出す。
浄土宗労働共済会の設立とともに、有志とともに超宗派の仏教徒社会事業研究会を結成して、社会事業の研究と調査をした。海旭らは計四回の全国仏教徒社会事業大会を開催し仏教社会事業の組織化をもたらすきっかけとなる。
大正期の政治参加
大正期の政治的行動主義型の活動としては、仏教徒による政治参加がある。大正デモクラシーの風潮の中、仏教界は文部大臣に働きかけを行い、参政権を求める運動を繰り広げた。そしてこの僧侶の参政権の問題は、大正一四年の普通選挙法の成立により実施され、地方選挙で百余名の僧侶が当選をはたし、一気に仏教界の政治参加が進んだ。
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