孤立から孤独へ(その2)
東畑開人 『聞く技術 聞いてもらう技術』 より

Reading Journal 2nd

『聞く技術 聞いてもらう技術』 東畑開人 著
 [Reading Journal 2nd:読書日誌]

第2章 孤立から孤独へ(その2)

今日のところは、第2章のその2、前回・その1では、著者の社会季評「連鎖する孤独」をまとめてから、「孤独」と「孤立」の違いについてまでまとめた。今日のところその2では、この孤立した人の支援とその難しさについて解説されている。

孤立した心

現在、国が「孤独・孤立対策担当室」を設置するほど「孤立」が社会問題になっている。著者は、この20年で深刻化した新自由主義が社会をバラバラにして個人に負担がかかりすぎていることに原因の一端があるとしている。

メンタルヘルスの本質は、結局「つながり」であり、孤立は健康に悪いのである。本来「心は人々の間を回遊しているのが自然で、個人に閉じ込められると病気になる」。

ですから、心の治療とは、基本的なつながりを回復することです。(抜粋)

そして、「孤立」をまねく、攻撃する他者は過去のトラウマからやってくる。このトラウマは、直接的な大きなトラウマだけでなく、微細なトラウマであること多い。コミュニケーションがうまくいかないとき、心は少しずつ傷つく

その微細だけど、慢性的な傷つきが、心に深いクレーターをつくりあげ、そこに幽霊のようにして悪しき他者がウヨウヨ沸いてきます。(抜粋)

このような時には慢性的に傷つけているコミュニケーションを変えていく必要がある。そして、現実の他者は必ずしも危険でないという感触が少しずつ増えていく。心の中の悪しき他者が少しずつ現実の他者に置き換わる。

人間には怖いところもたしかにあるけど、それだけがすべてじゃありません。案外、ひとは他人に無関心だし、けっこうやさしくしてくれる人もいるものです。(抜粋)

孤立の支援

では、孤立した人の支援には何が必要かであるか。
良いつながりを提供するのが一番よいが、これは大変難しい。そもそも良いつながり自体がよくわからない。

そこで、まずは具体的に役立つものを提供することが、孤立対策になる。たとえば、ホームレスの人には個室。貧しい子どもの支援には、子ども食堂での食事の提供などである。

そして何より、お金です。お金には孤立をやわらげるちからがある。(抜粋)

なぜこのようなものが、孤立対策になるかというと、それは安心を作るからである。安心=予想外のことが起きないという感覚である。お金が安心を与えてくれるのは、3ヵ月後も基本的に同じように過ごせるという感覚を与えるからである。

だから、お金はドカンと一度にもらうように、定期的に同じ額をもらうほうが健康にいいわけです。(抜粋)

他者とのつながるためには、勇気が必要だが、それには安心が必要である。


この部分は、ホームレス支援や貧困家庭などの支援の話が中心となっていてわかりづらいが、孤立している人には、「安心」を与えることが必要であるということだと思う。(つくジー)

孤立した人の心理

ここで難しいのは、孤立した人の心理である。孤立した人に声をかける必要があるが、そのとき、孤立した人は、「また罠に賭けようとしている」「まただまそうとしている」と思ってしまう。

ここが孤立支援の大変難しいところです。
支援者は味方になろうとして、話を聞こうとしているのに、敵だと思われてしまいます。(抜粋)

孤立をやわらげるためには、良きつながりが必要だが、孤立した人の内面に吹き荒れている悪しき他者の声が、このつながりを悪しきものに染め上げる。そのため堂々巡りの悪循環が起こってしまう。この循環を逆回転させる必要がある。

孤立支援の本質‐時間をかける、何度も会うこと

この循環を逆回転させるには、「時間をかける」しかない。この「時間をかける」は、メンタルヘルスの最初にして最終の奥義であると著者は言っている。
時間を信じること、繰り返し会うことが大切である。

人には「誰でも心が複数ある」。そして相矛盾する気持ちが押し引きしている。孤立しているとき、心は「他者は敵である」と思っているが、もう一つの心は「助けてほしい」「味方かもしれない」と思っている。

繰り返し会うことの意味は、この小さいほうの声のかすかなうめきが徐々に聞こえるようになっていくことです。(抜粋)

また、このような支援は第三者が有利である。家族や身近な人間は、一日中接しているため大きな方の声のみ聞こえ小さいほうの声が聞こえにくくなる。

普段のごたごたを体験していないから、第三者の耳はご家族よりも少しだけ新鮮です。(抜粋)

また、大きな方の声だけしか聞こえないのは家族だけでなく、支援者がバーンアウトする時にもみられる。支援をつづけても「役に立ってない」と言われることがあり、そして支援者自身も大きな声しか聞こえなくなり、すっかり絶望してしまうときがあるそのとき、

たしかに役に立っていない部分「も」あるけど、でも案外助かっている部分「も」ある。その「も」が見えると、助かります。(抜粋)

そのため、支援者自身も支援してもらうこと、大量に聞いてもらうことが大切である。

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