アサーションで身につく三つの力
平木 典子 『アサーション入門』より

Reading Journal 2nd

『アサーション入門』 平木 典子 著
[Reading Journal 2nd:読書日誌]

第四章 アサーションで身につく三つの力

今日から「第四章 アサーションで身につく三つの力」に入る。ここまでの章は、アサーションというコミュニケーションにおける技法についての説明であった。それを受けて、第四章では、アサーションが出来るようになると、日常生活や人間関係、さらには生き方にどのような力がもたらせるかということについて、考える。

第四章では、コミュニケーションの場面を、① 「タスクのためのアサーション」と②「メンテナンスのためのアサーション」の二つに分け、そして最後に二つの機能をつなぐものとして③「自己実現のアサーション」を考えていく。

タスクのためのアサーション

仕事などのタスクを行うときのコミュニケーションには、論理的思考や分析結果、具体的な提案や方法を伝えるなど、論理的思考や抽象的思考が必要になる。

メンテナンスのためのアサーション

しかし、このようなタスクが中心のコミュニケーションには、メンテナンスが必要となる。タスクを遂行するためにもメンテナンスが重要な支えとなる。このメンテナンスのためのコミュニケーションでは、非言語的行動情緒的表現が有効である。

このようなメンテナンスのコミュニケーションには、お茶を飲んでの雑談とか、飲みに行くなどの面と向かっての直接働きかける場が重要である。

このメンテナンスの言葉にかけには「慰め」「励まし」「いたわり」「賞賛」「感謝」「挨拶」などがある。

自己実現のアサーション

このメンテナンスとタスク達成のアサーションの機能は、完全に分かれるものではなく、状況と必要に応じて適切に使い分けることが必要である。仕事や課題を行う中にメンテナンスは必要であり、関係を維持するときにもタスクが必要な時がある。大切なのは、その「切り替え」と「つなぎ」をうまく統合することである。

ここでは、そのヒントが書かれている。

「愛することと働くこと」フロイトの言葉

まず、私たちは「愛することと働くこと」の両方を望んで生きているというフロイトの言葉を紹介している。これは、近年の「ワーク・ライフ・バランス」に通じる考え方である。

平常を保つためには、「食事」「睡眠」「人間関係」などのメンテナンス機能が不可欠であり、それが一定以上保たれ、回復されて初めて人は課題に向った働きができる。とりわけ人間関係のケアにつながるメンテナンスは欠かせない。

マズローの「欲求五段階説」との関係

次にマズロー「欲求五段階説」が説明されている。

マズローの「欲求五段階説」とは、欲求というものが下位段階から上位の段階、つまり「生理的欲求」「安全の欲求」「所属と愛の欲求」「承認の欲求」「自己実現の欲求」の5つに分かれ、さらに下位の欲求が充たされたのち、それより上位の欲求が出てくるというものである


このマズローの「欲求五段階説」は、有名で「モチベーションの心理学」にも解説がある(ココ参照)(「欲求理論<br>鹿毛雅治『モチベーションの心理学』より」をリンク)


まず一番下の「生理的欲求(飢えや渇きを充たしたい)」とその次の「安全の欲求(安全な場所を確保したい)」という欲求を「基本的欲求」と呼び、生命維持に必要な欲求である。

これが充たされると、次に「所属と愛の欲求」が生れる。これは、物理的安全が充たされるだけではなく、精神的な安全を充たすという欲求である。このような心理的に安全な環境を心理療法では「抱え環境」と呼んでいる。

ここまでの「生理的欲求」「安全の欲求」「所属と愛の欲求」を充たすには、これまで書かれていた「メンテナンス機能」が必要である。

これらの欲求が充たされると次に「承認の欲求」が湧いてくる。人は成果や理想に向かって課題に取り組み、そのプロセスで自分と他者を比較したり、自分を誇らしく思ったり落胆したりしてこの「承認の欲求」を充たしていく。

この「承認の欲求」は、各自の生き方を支え、違いを知り、互いに大切にしようとする力となっていく。

そしてそれが充たされたのち、「自己実現の欲求」が出てくる。これは他人との比較を離れ「自分がなることができる人間になろう」という欲求であり、「自分の持てるものを最大に生かす」という意味で「使命の達成」の欲求でもある

現代における問題

ここで著者は、「安全の欲求」がある程度充たされている国々では、社会が人により高度な課題を与え、それにより承認のサインを送っている、と指摘している。

つまり、人々は「何かを成し遂げなければ受け入れてもらえない」というメッセージを常に受け、「所属と愛の欲求」が充たすまえに課題の実行や成果を要求されている

つまり、ライフとワークのバランスが、ワークに偏っているのです。(抜粋)

現代では、「所属と愛の欲求」と「承認の欲求」に逆転現象が起きていて、課題を達成しなければ所属する居場所がなくなってしまう

そして、人々は他者から与えられる基準や、「~べき」「~べからず」という規定に縛られ自分を見失いがちになっている

「自己実現の欲求」は、「自分は自分であってよい」という自己の存在をいとおしむ気持ちと、「だから自分がなることができる人間になろう」という思いに裏付けられた欲求であり、能力や立派な業績のあるなしにかかわらず、誰もがもってよい欲求であるし、実現できるものなのです。(抜粋)

そして、このような現代の状況においては、よりいっそう「メンテナンスのアサーション」が重要となっている。

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