帝国化と民主化の拡大(その3)
上村 剛 『アメリカ革命』 より

Reading Journal 2nd

『アメリカ革命』 上村 剛 著
[Reading Journal 2nd:読書日誌]

第6章 帝国化と民主化の拡大 ― 一八〇〇年~一八四八年 (その3)

今日から「第6章 帝国化と民主化の拡大」“その3”である。“その1”、“その2”につづき、“その3”もアメリカの帝国かと民主化の拡大について取り扱う。ここでは、奴隷制をめぐる北部と南部の争い「ミズーリ妥協」について、そして、ジャクソンがすすめた先住民への土地への入植事業などにふれ、次第にアメリカの帝国化民主化が整っていく過程を見る。そして、アメリカ革命という時代は終わりを迎える。それでは、読み始めよう。

ミズーリの妥協

一八一九年、ミズーリ準州を州に昇格させるか際に、騒動が生じる。ミズーリ州が奴隷制を容認していることをめぐり、下院は可決したが上院で否決された。この背景には、北部と南部の緊張関係がある。このとき連邦二二州のうち奴隷制に反対する北部は一一州、奴隷制に賛同もしくは容認する南部も一一州だった。ここにミズーリ州が加わると南部が優勢になってしまうため、北部の州は昇格に南反対した。

これを解決するために、マサチューセッツ州の飛び地となっていたメインもミズーリと同時に州に昇格させ、北部と南部の均衡を保った。

そしてこのような争いが起きないように、「ミズーリの妥協」と呼ばれるルールが整備された。それは、「ミズーリ州よりも南に新しくできる州は奴隷がいてもいい州に、それより北は奴隷のいない州とする」というものである。

先住民への支配

このような連邦政府の権限の強化に対しては、州の反発も強かった。ここで難しいのは、人々の権利を守れ、連邦政府は人々の権利を侵害するなという、主張は奴隷制の擁護につながる点である。当時奴隷は白人の所有物であったため奴隷を開放せよというのは、白人の私的な所有物に対して国家が指示することになる。これは、近代国家の原理に反する事態である。

また、連邦政府の強化は、先住民の法的地位にも変化を生じさせた。永続的なマイノリティとしての従属である。当時先住民は外国人扱いであるとともに合衆国人としての権利も享受していた。その矛盾を解消すべくマーシャルら連邦最高裁判所はいくつかの判決を下す。そこには、新大陸の土地はヨーロッパ人の土地であり、先住民は征服された人々と規定された。また、連邦のみが先住民を排他的に支配できるとした。

こうして、先住民の主権は否定され、法的にも従属的な地位に置かれることになった。(抜粋)

アダムズからジャクソンへ

次の大統領選では、ジョン・クインジー・アダムズが大統領となる。彼は、第二代大統領、ジョン・アダムズの息子である。

アダムズは経済成長を根幹として支えようとする政策をした。そのためインフラストラクチャーと公教育の整備が必要であると考え、運河や道路の開発、大学や天文台の建設などを行う。

しかし、次の大統領選では、アダムズはジャクソンに敗れる。大統領になるとジャクソンは、先住民部族の土地を取り上げ、西部へとい移住させる強制移住法を通す。そして、先住民から取り上げた土地を、彼の支持者に無料で与える。

トクヴィルが見たアメリカ

一八三一年にフランスからトクヴィルがアメリカにやってきた。かれはアメリカの各地を回る。

トクヴィルの目にうつったのは、ヨーロッパほど身分格差がなく、人々が自分たちのことは自分たちでこなし、自治にいそしむ民主政の未来だった。しかしそれは手放しで称賛できるものでもなく、多数が少数をしいたげるという民主政の危険も予見された。(抜粋)

トクヴィルの帰国後に憲法の無効化の危機が訪れる。南部のサウスカロライナが連邦の課税が重いことに反発した。彼らは、連邦を形成しているのは州であるので、連邦による課税は憲法違反であると主張し、さらに、連邦からの離脱もほのめかした。

これに対して、ジャクソン政権は妥協関税法により譲歩するとともに、強制徴収法も成立させ、連邦が州に対して強制的に税を徴収できる権力であることも示す。

ジョセフ・ストーリー『アメリカが州国連邦憲法釈義』を刊行し、アメリカ合衆国は人々の契約によって連邦国家が掲載されているのであって州が連邦を作ったのではないことや、連邦と州との憲法上の争いが起きた場合には連邦の側に解釈権限があることを述べ、州の権利を否定した。この本はその後も長く読み継がれアメリカ憲法論の古典となる。

このように憲法の無効化の危機を乗り越え、連邦憲法体制は確固たるものとなる

アメリカ革命の終わり

連邦憲法体制の確立。そして自分のことは自分の手で行う民主的自治。アメリカ革命はこうして終わりを迎えつつあった。(抜粋)

ここで著者は、エマソン『アメリカの学者』ジョン・オサリヴァン「未来ある偉大な国家」などのアメリカの民主政を讃える文章を紹介している。そして、その同じころ『北アメリカの先住民族画集』が発売されたことを紹介している。それは、消え去りゆく先住民の首長たちの記録であった。

帝国化は、かつてその土地に生きた人々を、そしてその珠玉の日々の記録を消滅させるのと、表裏一体であったのである。(抜粋)

そして一八四六年から行われたメキシコとの戦争(米墨べいぼく戦争)で勝利したアメリカはカルフォルニアなどの領土を得た。そして一八四八年に大西洋から太平洋に到達した。

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