[再掲載]「臥龍諸葛亮、出づ」(三国志演義)
井波 律子『中国の五大小説』(上)より

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(初出:2008-06-25)

「中国の五大小説」(上) 井波律子 著

『三国志演義』の巻ーーー興亡の歴史と物語の誕生 六 臥龍諸葛亮、出づーーー天下三分の計

劉備は群雄の一人となったものの曹操と対立して劉表りゅうひょうのもとに身を寄せる羽目になった。劉備に一番欠けていたのは、全体を見通して作戦を立てる有能な軍師であった。劉備は水鏡すいきょう先生こと司馬徽しばきから

山野に隠れている奇才のなかで「伏龍ふくりゅう鳳雛ほうすう」と称される二人の逸材がおり、「一人でも得れば、天下を平定することができます」

と教えられる。

劉備はこの逸材を探し求めるが、最後に伏龍である諸葛亮しょかつりょうを「三顧さんこの礼」で持って迎える。
演義においてはこの諸葛亮はスーパースターである。彼は外交使節として熱弁を振るう一方で魔術を用いて戦況を有利にする。実際の諸葛亮は慎重な合理的タイプでありリスクの大きな冒険は避けた。演義の世界ではこうした実像の諸葛亮と民間芸能で広まった魔術師としての諸葛亮のイメージが混在している。しかし、諸葛亮は史実からみてもロマンティストである面を持つ。彼は曹操に比べれば無に等しい劉備の軍師となった。それは、ひとつには多くの逸材をかかえている曹操の軍師となってもで出る幕は無いとの現実的な判断だが、もうひとつには、劉備が全存在をかけて自分を求めていることを意気に感じて一肌脱ごうとする「侠の精神」による。
諸葛亮は劉備世代からすると20歳も年下だが、劉備は彼に全幅の信頼を寄せていた。また、当初は懐疑的であった関羽や張飛も彼の計画がうまくいくと、あっさりと彼に心服する。

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