[再掲載]「凡胎」三蔵と猪八戒(西遊記)
井波 律子『中国の五大小説』(上)より

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(初出:2008-07-18)

中国の五大小説」(上) 井波律子 著

『西遊記』の巻 — 巨大な妖怪テーマパーク 六 「凡胎」三蔵と猪八戒 — 子母河の難

『西遊記』のメインキャラクターは孫悟空であるが、一番魅力的なキャラクターかと言うとそうではない。彼は、ひたすら三蔵法師を守ろうとする真面目さが前面に出て、無条件に笑わせるところが少ない。『西遊記』の面白さは昔話風の「予定調和の面白さ」であるが、やはり物語世界をかき回す「トリックスター」がいる。『西遊記』での「トリックスター」は三蔵法師と猪八戒である。まず、猪八戒は、色欲、食欲、金銭欲などの人間的欲望の塊である。そして、「凡胎」である三蔵法師は大食漢でありすぐにお腹を空かせる。(三蔵法師が大食漢である事は『大唐三蔵取経詩話だいとうさんぞうしゅきょうしわ』にも載っている史実である。)両者は食い意地がはっている点で共通していて、その為か三蔵法師は、悟空よりも猪八戒の嘘の方を信じて災難に巻き込まれてしまう。

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