[再掲載]「転生、変化、よみがえり」(西遊記)
井波 律子『中国の五大小説』(上)より

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(初出:2008-07-15)

「中国の五大小説」(上) 井波律子 著

『西遊記』の巻 — 巨大な妖怪テーマパーク 四 転生、変化、よみがえり — 従者一行、勢揃い

ここから、孫悟空、龍太子、猪八戒、沙悟浄の順に道連れがそろう事になる。最初に三蔵法師に出合うのが孫悟空である。孫悟空は最初、勝って気ままにふるまうが、観音の変化である老婆が三蔵に「緊箍児きんこじ」— 三蔵がお経を唱える事により、ギュッとしまる輪がはまった頭巾 — を授けた後は、様子が変わり、まじめ一方となる。三蔵はお師匠と言っても情けないことこのうえなく、『西遊記』では、ぐいぐい先導する悟空とぐずぐずと世迷いごとをいう三蔵と主客が逆転している。

次に現れるのが、龍太子で、三蔵の馬を食べてしまったため、観音により白馬の姿に変えられ従者となる。

その後に猪八戒が現れる、彼は好色なブタの化け物として一行の前に立ちふさがるが、九歯のまぐわを武器に悟空と戦ううちに、彼らこそ観音が教えた取経の一行とわかると平伏してお供に加わる。観音が彼に与えた法名は「猪悟能ちょごのう」であるが、このとき、八種の生臭物を断ち、精進料理しか食べてはいけないという意味をこめて、三蔵が改めて「猪八戒」という名を与えた。

次に幅八百里、深さ三千丈の大河、流沙河りゅうさかにさしかかった時に現れた「水怪すいかい」が最後に従者に加わる沙悟浄である。沙悟浄は、ひたすら三蔵の守護を務める孫悟空やあくまで陽性の猪八戒に比べると、得体のしれない陰性のキャラクターである。西遊記世界では、悟空と猪八戒のあいだに位置し、両者のバランスをとる役割を担っている。日本では沙悟浄は「河童かっぱ」とされているが、中国には河童という妖怪は存在しない。中国では河童に類似した妖怪として「水虎すいこ」がいるが、沙悟浄のイメージはこれとも違っていている。

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